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小池一夫が構想した『ゴルゴ13』幻の最終回。ゴルゴは薬物中毒の逃亡者となり無残に散る

犬を殺すか否かで意見が分かれた!?

 小池の脚本への参加は、ゴルゴが自らの抹殺を試みた世界の諜報機関の影で暗躍する「虫」の正体がスイスの片田舎に住む修道女・マザー・ヨシュアであるという確証を得るために全財産を投じる「最後の間諜 -虫-」で一段落し、その後「査察シースルー」で最後となる。  この背景には、さいとうと小池の間に生じた「ゴルゴ観」の違いにあった。 「関係者の間では『南仏海岸』のラストでゴルゴが対峙した盲目の暗殺者を倒した後に、連れていた犬を殺すか否かで意見が分かれたことはよく知られているんです。  さいとう先生がヒューマニストな雰囲気を好むのに対して、小池先生は、もっとニヒルに捉えていて人殺しであるゴルゴは最後は殺されなければならないと考えていたようです。そのために、さいとう先生が修正の余地のないような方法で脚本も書いていたといいます」  結果、小池は去り、今では読者の間では「この頃のゴルゴはまだ若かった」とも評さている。  多弁で自己評価が高く、ロマンスの相手でも無表情で殺し、後ろに立っただけの相手を殴って警察に捕まる無用なトラブルを起こす異常性を持ったゴルゴ像は次第に薄まっていく。ただ、筆者が読んだ限りでは40巻くらいまではどことなく「若さ」が残る。 「やはり、その頃までは小池先生のゴルゴ像が脚本に影響していたんでしょう。初期ゴルゴを見ていた人とそうじゃない人との違いなんだと思います」

小池一夫が脚本を続けていたら……

 もしも小池脚本が継続していればゴルゴは『ザ・テロル』のようななれの果てとなったり、チンピラに刺されて死ぬような無残な最後を迎えていたのだろうか……。  発行当初話題になった『小池一夫伝説』だが版元の洋泉社が解散していることも影響しているのだろうか、この間の報道では顧みられることも少ない。ゴルゴの活躍が今後も見られるのは嬉しいが、やっぱり小池ゴルゴの最後も読んでみたいと思うのは、筆者だけだろうか。 文/昼間たかし
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』
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