小池一夫が構想した『ゴルゴ13』幻の最終回。ゴルゴは薬物中毒の逃亡者となり無残に散る
9月24日に84歳で死去した劇画家さいとう・たかを。その代表作である『ゴルゴ13』は、現在も「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に認定され現在も『ビッグコミック』(小学館)で連載が継続中だ。死去に先立つ9月6日には単行本202巻も発売されている。
1968年11月から連載が始まり、いよいよ連載53年目に突入しようとしている『ゴルゴ13』。その最終回をめぐっては、様々な説が噂されていた。もっともまことしやかな都市伝説として流布されていたのが「最終回のプロットはすでに完成しており、下書きが金庫に厳重に保管されている」というものだった。しかし、これはあくまで都市伝説に過ぎない。
今年7月『朝日新聞』のインタビューに書面で回答した、さいとうは最終回に問われて、次のように答えている。
「結末についてもよく聞かれますが、ずっと私の頭の中にはある。いつ日の目を見るかはわかりませんが」
(『朝日新聞』2021年7月9日付朝刊)
今回、死去の報に際し『ビッグコミック』編集部ではさいとうが生前から「自分抜きでも『ゴルゴ13』は続いていってほしい」という希望を持っていたことを踏まえ、今後も連載を継続することを告知している。とすると、本来は存在し得たかも知れない『ゴルゴ13』の最終回は永遠の幻となってしまったのか。
実は、連載開始当初には、あり得たかも知れない最終回の構想が確かにあったのである。その内容を明らかにしたのが漫画評論家・大西翔平の『小池一夫伝説』(2011年 洋泉社)である。
2019年に死去した小池一夫の来歴と数々の作品の軌跡を記した同書の中で作画・江波じょうじによる『ザ・テロル』(『トップコミック』1971年1月1日号〜1973年2月14日号にて連載)に触れた項がある。この項では、多くのページを割いて主人公のテロルが「その後のゴルゴ13」であることを、小池の言葉を交えながら綴っている。
この作品、現在は電子書籍化されており読むことは容易だ。全3巻と短い作品なので、読んでみると主人公は確かにゴルゴそのものである。なにしろその設定は「CIAに拉致された後に洗脳され、整形手術を施されたスナイパー」であり「ゴルゴダの丘で一度死にテロルとして復活した人間と語られる男」。
その相棒的役割を果たす武器商人・ネズミのパルスは、『ゴルゴ13』に度々登場しては無理難題を突きつけられる武器商人(「狙撃のGT」から登場し「最後の間諜 -虫-」でメッサーシュミット Bf109を2機とか「ミステリーの女王」で改良型F104の調達をゴルゴに依頼されるあの人)、そのものである。
都市伝説的な最終回を巡る噂
小池一夫による最終回の構想は確かにあった
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』
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