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小池一夫が構想した『ゴルゴ13』幻の最終回。ゴルゴは薬物中毒の逃亡者となり無残に散る

小池一夫作品特有の大風呂敷な展開に……

 ゴルゴを彷彿とさせる背景を持ちながら、テロルは完全に壊れた人物である。なにしろ作中ではマリファナを常用しているし、依頼を遂行どころか依頼人ごと抹殺。さらに屍体を犯す性癖まで持つ狂人である。  そんな暴走の果ての最終回で、テロルはアメリカ全土で指名手配され、犯罪組織からも追われる身となり、冷静さを失った彼に驚く、ネズミのパルスの問いかけにも答えることなく、1人飛行機で飛び立っていく。  そして、物語は能力を利用しようとする東側諸国や犯罪組織の無線を通じた呼びかけに応えることもなく、大空を黄泉路へと消えていくシーンで幕を閉じる。  一見、小池一夫作品に時々見られる大風呂敷を広げた末の最終回。だが、これこそが、描かれなかったゴルゴの末路だったというのか……。

小池一夫の影響は色濃く残る

「大西さんの本に書かれている通りで、ゴルゴは小池先生も含め、スタッフがアイデアを出し合い、それをさいとう先生がまとめて生まれたわけです。キャラクターが生まれた後、小池先生が脚本を任されてできたのが第1話の『ビック・セイフ作戦』。でも、時々口をすべらせて“ゴルゴはオレが作ったんだ”なんていうこともありましたけど」  小池をよく知る編集者は、そんなことを語りつつ大西の論を肯定する。  原作者として一本立ちするまで2年あまり、小池はさいとう・プロに籍を置いていた。その間、小池が手がけた脚本は18作品に過ぎない。だが、脚本数以上に小池の影響は色濃かった。 「当時、小池先生は原作者ではなく脚本チームに所属していたんです。でも、脚本がアップするとやることがないからホワイトとかベタもやるんです。なにより作画に必要な資料を準備するデータマンとしての役割も多くこなしていたんです」  今、初期作品を読むと小池脚本以外にも、小池イズムを感じる作品があることに気付く。その背景には、こうした事情があるようだ。
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ゴルゴ観への違いから……
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