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2021年の“裏流行語”!?「トー横キッズ」とは一体なにか?

少女たちの新たな居場所

「ぴえん」という病「ねぇ、今から一瞬、広場に寄っていい?」 「えー、最近めんどくさいからイヤだなぁ。アイツいるし」 「この時間ならいないって。大丈夫だよ」 「うーん。一瞬だけだよ、本当に」  家庭環境や学校の人間関係からの逃げ場だったトー横にも、複雑な人間模様は織りなされているようである。広場でたむろしていた少女に「あなたはトー横界隈なの?」と尋ねると、「あいつらと一緒にしないでよ」と返された。そのくらい細かい棲み分けがなされているようだ。傍からみればその差はわからないが。実際、広場前に中学の宿題のプリントと缶チューハイが並んでいて、それを解いている少年の横で中年男性が笑いながら酒を飲みながら見守っていた。年齢に関係なく繋がる。たまり場のような一面が、今の広場前に生まれつつあるようだ。    私が歌舞伎町に足を運び入れた2015年には、こんなことはあり得なかった。歌舞伎町は普通に危ない場所だと思っていた。一緒に足を運ぶ友達なんていなかった。同年代の友達が増えたことなんてなかった。そんな私からしたら、トー横界隈はすこし羨ましいし、私が15歳だったら一度は訪れているんじゃないかと思う。それでも、すべてを肯定することはやはり難しい。今でも歌舞伎町を歩いていると唐突に中年男性から「君いくら?」と聞かれることがある。この街にいるってことはそういう女の子なんだと見られる。トー横にいる女の子=売春するというイメージも報道によりつけられたようで、SNSでは「トー横でお金に困っている子いませんか?」と買春目的の男性のアカウントも生まれつつある。  12歳の少女が売春相手を見つけたのもSNSだった。トー横の女の子の多くは自撮り界隈出身であり、当然、自身の写真をアップしている。かわいい女の子には多数の援助交際のオファーが届く。いつでも魔の手が迫る。また、すぐ横に歌舞伎町のお金を使う文化がある環境は、やはり金銭感覚も狂いやすいし危険だ。とはいえ、彼女たちを強制的に家庭に引き戻すような行為は意味がないと筆者は考える。問題があるから逃げてきたのに、問題が起きている場所に追い返すだけでは、問題がくすぶるだけだ。  何ができるのか、何が正しいのかは今後も考え続けたい。今、ある意味悪い大人もまともな大人も目を光らせることができる「路上」という場所に彼らがいてくれるのは、早期発見・早期解決をするうえで大切なことだ。過干渉にならず、かといって放置もせず、問題が起きたら大人が大人らしい対応をして助けるということが、ひとまずの対策としては適切なのではないだろうか。  トー横にキッズたちはいなくなったが、体育祭か文化祭終わりの記念Tシャツを着た女子高生が写真を撮っていた。もはや撮影スポットのようだ。私たちの時代でいうと原宿の竹下通りのような感覚で、彼女たちは歌舞伎町に集まっているのだろう。そして2021年11月27日には、歌舞伎町のビルで発生した殺人事件で、メディアは“トー横キッズが関与している”と報じた。トー横界隈の人間が減り、若者たちの憩いの場である現在のシネシティ広場は、今回の報道でまた姿を変えていくのだろうか。 【関連】⇒現役女子大生ライターの佐々木チワワ氏の過去記事一覧
現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

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