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未曾有の惨害となった日本のオミクロン株。世界と比べて明らかな検査不足。その結果の統計崩壊

どの程度の過小評価か

 それではどの程度の過小評価なのでしょうか。筆者は、検査飽和する前の統計から外挿することで、本邦第6波では、1月中旬以降、統計の10倍から20倍が真の日毎新規感染者であろうと推測しています。これは、極大値で数万ppm/日(数%/日)の日毎新規感染者数があり得ることを意味しており、第6波収束時には1000万人を超えるο株感染者が生じることを意味します。  ここで合衆国西海岸ワシントン州の保険指標評価研究所(IHME)による日本における真の感染発生の推定を見ます。
IHMEによる感染発生日基準での真の感染発生数の推定(人 片対数)

IHMEによる感染発生日基準での真の感染発生数の推定(人 片対数)
OWID

 IHMEによると、日本では、中央値で約300万人の感染が発生しており、これはο株における新規感染者数統計の遅行日数である10日後、1月25日の実測値約5万人に対して60倍という凄まじい倍数となります。95%信頼区間で100万人から620万人ですので60倍を中心に20倍から125倍ということになります。  本邦は既に検査飽和をして富士山型波形となっていますので、極大値となる日までこの倍数は拡大してゆきます。極大日が2月10日前後とすると中央値で100倍まで拡大すると考えられます。  米英欧などでは精々中央値で8倍前後ですので本邦は検査飽和によって著しい過少評価に陥っているということになります。但しIHMEには、Surge(波)の渦中では過大評価をする癖がありますので、実際には10〜20倍程度に落ち着くのではないかと考えられます。  従って、現在本邦は、英欧米の最悪国と同等の10000ppm/日(1%/日)程度の感染者が発生しており、1000万人から3000万人程度が感染すると推測されます。感染致死率(IFR)は、0.01%〜0.1%程度と考えられますので第6波の死亡数の推測も可能です。  死亡数より深刻なのは、COVID-19 Long-Hauler (Long COVID)の発生で、数百万人が苦しむことになる可能性があり、その大部分が検査抑制の結果として感染事実が認定されない、見殺しになることです。これは、明治開闢以来、特に戦後以降の本邦厚生行政の特徴です。

失敗に終わるワクチン3rd Shot(Booster Shot)

 英欧米では、冬のδ株Surge「秋の波」対策として三回目のワクチン接種、「ブースター接種」が昨年9月頃から急がれています。これは、第1世代COVID-19ワクチンの感染回避、発症回避有効性が二回接種後4ヶ月程度で失われ、6ヶ月後にはほぼゼロになるためです。ところが本邦は、科学的に全く根拠のない二回目接種後8ヶ月たった人から3rd Shotをするという完全に厚労省の都合でしかない非科学的な決定がなされ、これを専門家分科会が追認してしまいました。この時点で第1世代ワクチンは4〜6ヶ月で抗体失活すると分かっていましたので、筆者はこの決定に飛び上がるほど驚き、腰を抜かしました。
フランス、イタリア、豪州、英国、合衆国、日本、韓国、インド、フィリピン、南アと世界全体の百人あたりBooster接種率の推移(% 線形 累計) 2021/11/01〜2022/02/03

フランス、イタリア、豪州、英国、合衆国、日本、韓国、インド、フィリピン、南アと世界全体の百人あたりBooster接種率の推移(% 線形 累計) 2021/11/01〜2022/02/03。インドネシアは統計なし(OWID

 結果として本邦は、3rd Shotの接種率が著しく低くなっており、ο株Surgeが収束しつつある2月末でも精々15〜20%程度と見込まれますので、完全に間に合いません。せめて1月までに25%の接種率を達成していなければなりませんでした。  本邦は、δ株Surgeでは、目覚ましい急速接種の進行で接種成功国となりましたが、ο株Surgeでは、ワクチン接種事業に失敗した国として諸外国とのコホート研究対象(比較対照群)として有力視されることとなります。  Booster Shotは、ο株への感染回避には実用的有効性がほぼ期待出来ませんが、接種後一ヶ月間は発症回避がある程度期待出来るとされます。これらの抗体免疫による有効性は1ヶ月で失活しはじめ、2ヶ月後にはο株に対してはほぼなくなるとされます。一方で、重症化回避、死亡回避については実用的有効性が期待されると考えられており、実際に先行国の統計はそれを支持しています。  第6波ο株Surgeでは、謎々効果は全く発揮されず、ワクチンBooster接種事業は失敗、検査破綻のために1割程度のδ株感染者に有効なモノクローナル抗体カクテル療法の運用も困難という悲惨な状態にあります。  これは完全に厚生労働省と専門家と称する国策エセ医療・エセ科学デマゴーグによる大失政と言えます。ο株Surgeにおいて本邦では、謎々効果(Factor X)が働いていませんのでワクチン接種の重要性は、以前より遙かに高いにもかかわらずです。
IHMEのデータ

主なCOVID-19ワクチンの在来株と変異株への重症化回避および感染回避有効性
実用ワクチンの最低限度の有効性は、50%以上なければならない(IHME

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しかし、波はゆっくりと去っていく
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まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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