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未曾有の惨害となった日本のオミクロン株。世界と比べて明らかな検査不足。その結果の統計崩壊

国際比較で明らかとなる日本の検査不足

 本邦は、検査が飽和して統計が既に現実を大きく過小評価しています。それでは世界ではどうでしょうか。フランス、イタリア、豪州、英国、合衆国、日本、韓国、インド、フィリピン、南ア、インドネシアと世界全体の百万人あたり日毎新規感染者数と検査陽性率の推移と百万人あたりの検査数・検査陽性率をグラフ化するとよく分かります。  世界保険機関(WHO)は、検査陽性率が5%を上回ることは危険としています。そして、サンプリング計測の常識としてサンプリリングが10倍を割り込むと取りこぼしが大きくなることが知られています。これはデジタルストレージオシロスコープのサンプリング周波数などで工学計測では常識で、概ね高等専門学校(高専)以上の学生、生徒なら知っていることです。
フランス、イタリア、豪州、英国、合衆国、日本、韓国、インド、フィリピン、南ア、インドネシアと世界全体の百万人あたり日毎新規感染者数と検査陽性率の推移(ppm片対数7日移動平均) 2021/11/01〜2022/02/03

フランス、イタリア、豪州、英国、合衆国、日本、韓国、インド、フィリピン、南ア、インドネシアと世界全体の百万人あたり日毎新規感染者数と検査陽性率の推移(ppm片対数7日移動平均) 2021/11/01〜2022/02/03。検査数には抗原検査を含み検査陽性率は色分け
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 本邦は、世界平均を百万人あたり日毎新規感染者数では抜いており、既に減衰傾向となっている世界各国の傾向に対していまだに増加傾向です。  そして、米欧の1/10以内に迫っています。本邦は、謎々効果(Factor X)が最も強い東北アジアに位置しており、本来ならば米欧の1/100〜1/1000程度の百万人あたり日毎新規感染者数でしたが、既に1/10以内の圏内です。  それだけでなく、百万人あたり日毎新規感染者数が1000ppm(1‰)を超えて仕舞っている英欧米では、英国とイタリアを除き検査飽和を起こしてしまっていますが、それは1000ppm以上で生じています。それに対して本邦は、80ppm程度で検査飽和が顕在化する検査陽性率10%を超えており、英欧米諸国に比して1/10の検査能力すらありません。従って、過小評価は本邦においてたいへんに著しいと言えます。  アジア、大洋州でも本邦より検査能力が低いのはフィリピン程度であって、本邦の異常性が目立ちます。  ここで千人あたりの検査数(抗原検査を含む)と検査陽性率をグラフ化すると本邦の検査不足が露わとなります。
フランス、イタリア、豪州、英国、合衆国、日本、韓国、インド、フィリピン、南ア、インドネシアと世界全体の千人あたり検査数と検査陽性率の推移(ppm片対数7日移動平均) 2021/11/01〜2022/02/02

フランス、イタリア、豪州、英国、合衆国、日本、韓国、インド、フィリピン、南ア、インドネシアと世界全体の千人あたり検査数と検査陽性率の推移(ppm片対数7日移動平均) 2021/11/01〜2022/02/02。検査数には抗原検査を含み検査陽性率は色分け(OWID

崩壊している日本の統計

 検査不足によって感染者数の過小評価が生じているのは日毎新規感染者数の波形を見ると分かります。ここでは比較的綺麗に壊れている広島県の事例を示します。
日毎新規感染者数(青。ppm)と日毎死亡者数(黄。ppm)、検査充実率の推移(片対数 左軸)2021/11/01〜2022/02/03

日毎新規感染者数(青。ppm)と日毎死亡者数(黄。ppm)、検査充実率の推移(片対数 左軸)2021/11/01〜2022/02/03。検査数には抗原検査を含む(NHK・広島県集計)

 広島県では、1月7日に検査充実率が10を割り込み、検査・統計の飽和が顕在化しています。事実この日から実効再生産数が不自然な急減に転じ、指数関数的増加を示してきた曲線が折れています。そして1月15日には検査充実率が5を割り込み、日毎新規感染者数が頭打ちとなって自然科学上あり得ない富士山型の頭が平らな曲線となっています。これは完全に統計が飽和したことを示しています。  この状態が2月4日現在で20日間続いていますが、広島県は、2月に入り減衰に転じた可能性があります。2月中旬までには富士山の下り斜面になるかもしれません。  この様な不自然な波形は、第3波東京、第4波大阪、第5波東京都その周辺自治体と沖縄県で生じて来ましたが、第6波では、47都道府県全てで生じています。極端な検査不足が、日本全体で統計を破綻させています。  比較的検査能力のある自治体でも百万人あたり日毎新規感染者数が1100ppm(1.1‰)を超えると富士山型となり、脆弱な自治体では数百ppmを超えると富士山型となっています。計測では、典型的なサチッた(飽和した)状態と言えます。
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日本の統計はどれくらい過小評価になっているのか?
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まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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