セーフティネットがない社会が到来する
大空:それは僕が今一番考えてる課題でもあるんです。僕らの世代は学生ベンチャーでも数千万から1億円の資金調達が容易になっているから、わざわざNPOに行こうって若者がいない。でも、市場の原理では成り立たない、解決できないのが自殺のホットラインやセーフティネットなんです。これまでの自殺相談窓口の問題には大きく2つあって、ひとつは絶対的な相談員の人手不足。無償ボランティアな上に高額な研修費用を払って、プライバシーの問題で事務所まで出勤しなければならないなんて、余裕のある一部の高齢者しかできないんですよ。
──「人手不足」ではあるけど決して「成り手不足」ではなく、相談員の善意や熱意にすべてを押しつけているシステムの問題だと。
大空:そうです。もうひとつは、そうした体制だから24時間対応ができなかった。でも、自殺者数が多いのは午前0時から2時といった深夜なんです。だから、僕は相談から相談員の研修まですべてのプロセスをオンラインで完結できる仕組みにした。ボランティア相談員も完全リモートにすれば、海外在住の日本人に協力してもらい時差を利用することで、24時間切れ目のない相談支援が可能になりました。
佐々木:たった2年でそこまでやったって、歌舞伎町にしか行ってない自分が恥ずかしくなってきた(笑)。
大空:いや、逆に僕にはできないことだから(笑)。佐々木さんの行動力もすごいよ。僕は、若者がこうした社会的な動きに取り組むことができない余裕のない現状を本当に危惧しています。自殺対策のNPOで言えば、僕のすぐ上の世代でも30代、40代の人が中心で、僕らの世代は皆無。このままでは50年後、いや10年後にセーフティネットがない社会が到来してしまうかもしれない。
佐々木:それ、超怖いです。でも、自分の本もそうですけど、現代社会を勉強すればするほど閉塞感しかなくて、この世界で生きていくのが嫌になる(笑)。笑い事じゃないけど、やるせない気持ちになります。私は、歌舞伎町を社会学的に研究しているけど、例えばホスト自体は50年以上前からある文化で、でも当時と今では求められている価値がまったく違っています。システムは変わってないけど、中で売買されているものが絶対的に違ってきている。金銭的余裕のある人の遊びとしての消費と、ぴえん系女子たちの生きる価値、承認としての消費。そこが興味深くて追いかけている部分もあるのですが。
──それこそ、世代間の分断ですよね。多様性が生まれているとも言えるのかもしれませんが……。
佐々木:私たちや私たちより下の世代って、上の世代の人たちがよく言う「昨日のあのテレビ見た?」的なクラス全員が知っている共通の話題がないんですよ。
大空:細分化してるから、どういう世代かって本質的にくくれないよね。
佐々木:だからSNSとか狭いコミュニティに寄りがちなんですよね。それこそ大空さんも歌舞伎町に来ることなんてあります?
大空:ほとんどないよ。この2年は霞が関周辺を駆けずり回っていたし。今日はもしかして佐々木さんにホストクラブに連れて行ってもらえるのかな?って期待してたけど(笑)。
佐々木:もっと早く言っていただけたらお連れしたのに!