共通した自己肯定感と自己評価の低さ
──それぞれの立ち位置から社会にコミットしているという共通点はありますが、お二人は真逆のキャラクターなのにどこか似た雰囲気があるように感じます。
佐々木:ZとかSNSとか世代でくくられるのは好きじゃないし、くくれないと思うけど、私たちの世代にはある種、共通した自己肯定感と自己評価の低さがある気がします。
大空:それはありますね。うちの相談窓口にアクセスしてくるコたちを見ていても、自己否定のループにすごく陥っている。
佐々木:ぴえん系女子って「お金を使わないと人とつながっちゃいけない」ってよく言うんですが、自分に魅力があれば対等だけど、そうじゃないからお金を払ってホストなりSNSの有名人的な「推し」とつながれていると思っているんです。若くして女を売る以外で年上の異性と関わらないコは、彼らと会う時にどんな場面でも性的に消費されていると感じている場合も。人間として面白い、学びがあるからコミュニケーションを取るという概念がないから、私が仕事相手とご飯に行くことに「お金もらえないおじさんとなんでご飯を食べに行くの?」って聞かれたことが一度ならずあって。
若者の自己否定ループには“周囲の肯定”だけが救いの道だ
大空:金銭を介することが、自己肯定感を高める手法のひとつになっているんですね。本にも書きましたが、自己否定のループが家庭の中にまで蔓延していることも問題だと思います。望まない孤独の背景には、「自分のせいだ」「自分が悪い」といった懲罰的な自己責任論が必ずある。「親ガチャ」もメディアの報じ方で歪曲されているけど、同根の問題。でも、自己肯定感って自分で高めるのは難しいんです。絶対的に他者からの肯定が必要。相談窓口ではとにかく傾聴しながらその人を肯定して、承認することを大事にしているのですが、結局これを親や教師、そのコの周囲にいる誰かがやらなければ何も変わらない。
佐々木:でも家がダメだと、それができる教育機関は少なすぎますよね。
大空:実質偏差値至上主義的な教育システムでは無理だと思いますね。
──難しい問題に立ち向かっているお二人が、これからやってみたいことはありますか?
大空:本当は海外の大学院に行ってもっと学びたいことがあるけど……。しばらくは無理そうですね。
佐々木:ルポも書くけど、フィクションにも興味があるし、最近はコントを作りたくて、お笑い芸人養成所のオーディションに行ったりとか。
大空:佐々木さんの持ち味だけど、ちょっと広げすぎじゃない?
佐々木:だって大空さんみたいにこれってテーマにまだ出合えてないんですよ私は! 将来が不安すぎる。これを機にまたご指導お願いします。
大空:作家として頑張って、令和の林真理子みたいになってくれることを期待していますよ(笑)。
3/1発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです。
【Chiwawa Sasaki】
’00年生まれ、東京都出身。10代の頃から歌舞伎町に出入りをし、ホストクラブのあるビルの屋上で自殺を止めたことをきっかけに、「歌舞伎町の社会学」を研究。その傍らライター、コメンテーターとしてメディアでも活動。慶應義塾大学総合政策学部在学中
【Koki Ozora】
’98年生まれ、愛媛県松山市出身。「信頼できる人に確実にアクセスできる社会の実現」と「望まない孤独」の根絶を目指すNPO法人あなたのいばしょ理事長。内閣官房孤独・孤立対策担当室HP企画委員会委員など。慶應義塾大学総合政策学部在学中
取材・文/仲田舞衣 撮影/尾藤能暢