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「日本で生きたい」9年後に突然ビザを奪われたクルド人家族の訴え

いまトルコに帰れば、また逮捕されてしまう

 7月6日、トゥンチュさん夫婦と二十歳を超えた長女と次女が東京入管に呼び出され、口頭審理のインタビューを受けた。母親は、インタビューの様子をこう話す。 「インタビューにトルコ語の通訳はついていたけど、私は学校にまったく行っていないのでトルコ語とクルド語が中途半端にしかできない。だからインタビューの内容がよくわからなかった。字も書けないので自分の名前を書くことができない。職員になにか用紙を出されて記入するように指示されたけど、それができなかった。  トルコでは一人で外に出られない。とても治安が悪い。クルド人だからとトルコ人に狙われることがある。ガジアンテップでは、クルド人だという理由だけで殺された人もいる。トルコへは帰りたくない」  長女はこう語る。 「入管に『なんで日本にいるんだ? なんで帰らないの?』とインタビューされました。私は13~22歳まで日本にいます。今さらトルコに帰っても何もできないし、帰りたくないのです。家族みんな、日本に残ることを望んでいます」  トゥンチュさんには、さらに帰国できない事情があった。日本で難民申請をしていたクルド人が半年のビザを取られて入管に収容され、1年間の収容生活に耐えかねて2018年に自主帰国した。帰国後すぐにトルコ警察に捕まり、尋問を受けた。取り調べでは日本にいるクルド人たちの情報を流すようにと脅しを受け、彼は言われるがまますべてを話してしまった。  そのときにトゥンチュさんの情報も伝えられてしまい、より危険な状況になってしまったという。ネブロース(新春のお祭り)で、トゥンチュさんがクルドの旗と分離独立運動の指導者の顔写真と一緒に写っている姿も警察に把握されてしまった。 「私は2度もトルコから逃げようとした。さらにこの件も含めれば、帰国すれば逮捕されてしまう」とトゥンチュさんの表情は重くなっていく。

ビザもらう人と、もらえない人の違いがわからない

時に、絶望しうつむくトゥンチュさん

時に、絶望しうつむくトゥンチュさん

 子供たち全員も「トルコへは帰りたくない。日本に残りたい」という意志は固い。三女は今年、都内の公立高校に合格したが、3月から仮放免の扱いになってしまったため日本人の子供のように無償化にはならず、1年で26万円の学費がかかる。トゥンチュさんは授業料を最初に6万円、毎月1万円ずつ払っている。  四女は中学3年生で、来年には受験を控えている。 「なんで今まで(日本にいて)良かったのに突然ダメになったの? ビザを返してほしい。今、学校は友達もいて楽しいし、将来の夢があるから大学まで行きたい。私は日本人に生まれたかった」  小学6年生の末っ子も「差別だよ、みんな一緒の人間なのに。ビザもらう人と、もらえない人の違いがわからない。教えてほしい」と語る。
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日本初のクルド難民認定が追い風となるか
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