同じ仕事が1年以上続かない45歳男性「職場の人間に“裏切られた”を繰り返し…」
仕事量の増加、人間関係の軋轢、業務内容への不安――一口に職場のメンタル不調といってもそのケースはさまざまだ。実際にメンタル不調で休職した個々のケースを掘り下げ、当人、もしくは会社側の対応の是非や、善後策について、医師の見解をもとに振り返ってみたい。
最後に正社員として働いたのは、輸入食品の卸販売のルート営業。その仕事も1年半ほどで退職している。きっかけは営業中の事故だった。
「配達中、路肩に停車していたら車が動いて、前に止まっていたトラックに追突してしまったんです。ブレーキはかけたはずだし、そう主張したのですが……警察や保険会社が入ってドライブレコーダーを解析したら、こちらの車が動いていたことが証明されて。『嘘をついた』と会社の人に思われているような気がして、いづらくなってしまったんです」
ただ、事故はきっかけにすぎず、そのとき、すでにサダオさんの精神状態はギリギリだったという。ブレーキ操作が甘かったのも、それに気づかなかったのも、メンタル不調があったことが原因だろう。
「営業とはいっても、仕事はプロモーションから販売、配送など業務は多岐にわたりました。マルチタスクが求められ、しかも、時間の制約もある。苦手なことを後回しにしていたら期限内にこなせなくなって。うまくいかないことが増え、混乱して忘れものやミスが増えて……と悪循環に陥っていたんです」
職場で言いにくいホンネ、
上司や先輩に確認や相談ができればよかったのだろうが、それもできなくなっていた。幼い頃から記憶することが苦手だったというサダオさん。入社当初は「報・連・相」をしていたが、次第に気後れするようになった。「前にも言ったじゃん」と言われるのが怖かったからだ。
「上司や先輩とのコミュニケーションがうまくいかないのがしんどくて。しかも、プライベートでも、実家の母や弟が相次いで体を壊して入院したり、妻と一緒に頑張っていた妊活がうまくいかなかったり。いろいろあって、ストレスはどんどんたまっていきました」
通勤電車内で気分が悪くなるようになり、しまいには家で出勤の支度をしているときから、めまい、動悸、息切れ、吐き気などの症状に襲われるようになっていた。
「もうダメかなと思いながら、妻にはすべて話して一緒に考えました。妻の存在は心強くはありましたが、何をどうすればいいか具体的な解決方法は見えず、ストレスはたまる一方で、それによる恐怖心や将来不安で何も手につかなくなっていました。そのタイミングの事故だったんです」
メンタルクリニックで適応障害と不安障害と診断され、2年ほど休職。その間に「発達障害かもしれない……」と思いテストを受けたところ、確定診断を受けた。しかし、サダオさんは結果を聞いて、「診断名がついて自覚できたことで、むしろ楽になった」と言う。
「あきっぽい、同じ場所にいられない、同じことを毎回できないというのは、ADHDの特性でもあって。今まで仕事が続かなかったのも仕方なかったんだなって。それからは、ムリして続けなくていいと思えるようになりました」
現在、研修を受けているマッサージ店は友人の紹介。妻の支えもあり、気持ちは次第に落ち着き、前を向けるようになってきたという。
「立ち直る方法は人によって違うと思います。つらい時はただただ不安で、睡眠時間もめちゃくちゃ。人に会うのも億劫で、何をしても楽しい気分になれませんでした。雨が降っただけでも原因不明の頭痛に襲われ、気力がなくなって。でも、自分の好きなこと、やれること、得意なことから少しずつ、焦らずにはじめていけば、気持ちも前向きになれるような気がしています」
メモリークリニックお茶の水の理事長で医学博士の朝田隆先生はサダオさんのケースについてこうコメントする。
「マルチタスクやスケジュール管理が苦手というのはADHDの方によくある特性です。それが信頼を損なう原因となったり、仕事上のトラブルを引き起こしたりして、転職を繰り返すというのは、珍しいことではありません。
サダオさんが、『人間関係を壊したくないから、その前に仕事を辞める』というのは、かつて傷ついた経験があり学習した結果かもしれません。
もともと持っている気質ですから、根性論だけで改めることは極めて難しく、まずは自身が、ADHDであるという病識、あるいは、「自分はうまくできないところがある」という病感を持つことが重要です。
最近では、ゲーム上でアバターを操り、行動を客観的に見ることで自己を理解するという療法もあります。「病気について納得する」というのは、とても大事なプロセスなのです。
その意味で、サダオさんは、自分がADHDであることを知り、受け入れられている。支えてくれるパートナーもいて、その存在はとても重要です。
現在は新しい職場で研修中とのことですが、たとえば、臨機応変な対応を必要としない業務など、仕事内容を配慮してもらえれば、長く続けることができるのではないでしょうか。
加えて、社内に本音を話せる人や、たとえば、仕事の成果が100%でなくても、7割できたことを評価してくれるなど、折々でチェックをし、理解あるメッセージを送ってくれる同僚や先輩がいると理想的です。同時に、ご自身も特性を踏まえたうえで努力しようという謙虚さを持つと周囲の理解を得ることができるでしょう」
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<取材・文/日刊SPA!取材班 提供/イーガイア>
「“友達やめるか仕事やめるか”の二択で職場を転々」 サダオさん(仮名・45歳)
「心がもたなくなって仕事が長続きしない人やうつ病になる人は、根が真面目なんだと思います。『きちんとしなきゃ』と思うあまり限界を超えるまで頑張って、パニックになってしまう。『適当でいい』と割り切るなど、ストレスをうまく飼いならすことができないんです」 そう語るのは、現在、大手マッサージ店で研修中のサダオさん(仮名・45歳)。 20代はケータイ販売の派遣社員として家電量販店を転々とし、20代後半で友人と派遣会社を立ち上げ、寝る間もないほど働いた。が、2年半ほどで気力と体力の限界を迎えて離脱。そして、30代から現在に至るまで、飲食店を中心に10以上の職場を転々。1年ほど働いては人間関係がこじれて退職……を繰り返してきたという。 「人と関わるのが好きで得意なほうだと思うんですが、些細なことで『裏切られた』と感じ、人間不信になってしまうんです。職場の人とも友達になっちゃうから、人間関係が壊れる前に辞めようって。友達やめるか仕事やめるかの二択で、いつも友達を選んできた感じです」マルチタスクを求められ、仕事が追いつかない
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上司にミスを指摘されるのが怖くて……
適応障害と不安障害の医師の診断
医師見解「もともとの気質は根性論で解決できない」
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