ニュース

金融緩和を続ければ、あと少しで景気は完全に回復する/倉山満

米英と日本のインフレを同列に扱う時点で、どうかしている

 しかし、円安・インフレとデフレ・円高、どちらがマシか。極端な円安とインフレは問題だが、デフレ(とそれに伴う)円高はすべて悪だ。体温が高すぎても低すぎても困るが、平熱で安定するのが良いに決まっている。その数字は2~4%に収まるのが適切だと、正統派経済学は教える。だいたい、米英のように10%近くのインフレで苦しんでいる国と、2%をコストプッシュインフレで超えるか超えないかの日本を同列に扱う時点で、どうかしている。  むしろ、今こそデフレ脱却の最後のチャンスと心得るべきだ。お札を刷る→円の価値が下がり円安となり商品の価値が高まる→消費が喚起される→物価が上がりインフレ傾向となる→給料が上がる。今は、みんなの給料が上がる寸前なのだ。  しかもアメリカは急激な金融引き締めを忌避し、ドル高円安を許容している。この状況を利用して円安誘導でインフレにもっていき、一刻も早く国民全体の給料が上がる社会を実現すべき時だ。だから、円安物価高ドンと来い! 1ドル160円を目指せ! と言っているのだ。円安対策など、頓珍漢もいいところだ。

あと少しで給料が上がる。今の政策をやめてよいのか

 これを黒田総裁や、岩田前副総裁の後任の若田部昌澄副総裁は心得ている。黒田総裁は「今の政策を2~3年くらい続ければ、デフレから完全脱却できる」と記者会見で述べた。これは日銀官僚どもに黙ってのアドリブだったそうだ。では、なぜ2~3年なのか。正統派経済学では、1年くらいと考えているのに。  これは純粋な経済学的見地ではなく、政治的視点だろう。黒田総裁と若田部副総裁の任期は半年しかない。そして、本欄で再三主張しているような「若田部総裁による日本救国」の可能性など皆無であり、ポスト黒田では「誰が最も早く金融緩和をやめるか」の競争が行われている。  マスコミなど、その道具だ。メディアは一日も欠かさず、「悪い円安」「給料が上がらないのに物価高」を連呼している。これが正統派経済学を否定する反黒田派の謀略でなくて何か。  岸田首相も国民も、現実を見よ。あと少しで給料が上がる社会が実現するところで、今の政策をやめてよいのか。  地獄に落ちたくなければ、現実を直視せよ!
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

噓だらけの日本古代史噓だらけの日本古代史

ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作は、日本の神話から平安時代までの嘘を暴く!

1
2
3
おすすめ記事