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岸田内閣の運命は、後継の日銀総裁人事で決まる/倉山満

 本欄で何回言ったかわからないが、復習しよう。安倍内閣無敵の方程式は、「日銀が金融緩和をする→株価が上がる→支持率が上がる→選挙に勝てる→誰も引きずり降ろせない」だ。結果、安倍晋三元首相は憲政史上最長政権を築いた。 日本銀行 アベノミクスの中核である金融緩和の破壊力はいかほどか。コロナ禍で強烈なデフレ圧力がかかっているのに、リーマン・ショックのような地獄絵図にならなかった。そしてウクライナ危機からは資源高で、インフレ傾向に転じている。  簡単な経済の原理だが、モノの値段が上がり、会社の売り上げが上がらなければ、給料は上がらない。10年も金融緩和を続けて効果が無かっただのなんだの言われたが、あと一歩だ。ここで金融緩和を止めれば、デフレに戻って元の木阿弥。皆の給料が上がるまで、今が正念場だ。

金融緩和の効果を減殺する「消費増税」

 金融緩和の効果を減殺する方法は、ただ一つ。消費増税だ。安倍元首相は最初の一年こそ経済も政治も破竹の勢いだったが、時の財務事務次官木下康司に消費増税を押し付けられてからは、勢いが失速。その後も何とか持ちこたえたものの、景気回復は緩やかでしかなくなってしまった。野党や自民党反主流派が弱すぎたので内閣は延命したが、政権が終わってみれば「実績はあるが、レガシーはない」などと揶揄された。安倍元首相、日々の行政はせっせとこなしたが、歴史に残る大きな政治的業績はあげられなかった。  このパラダイム、岸田内閣にも受け継がれているのはご理解できただろうか。そして、このパラダイムが続く根底は、日銀人事だ。黒田東彦総裁の任期中は金融緩和がブレることはなかろうが、任期が切れた翌年4月以後はわからない。すべては後継の日銀総裁人事次第だ。2人の副総裁も入れ替わる。

次期日銀総裁は若田部昌澄副総裁の昇格、一択だ

 では、次期日銀総裁は誰が良いか? 若田部昌澄副総裁の昇格、一択だ! 若田部副総裁は、アベノミクスを支持するリフレ派の経済学者である。文明国では、中央銀行の総裁は学者がなるのが普通だ。若田部博士ならば、申し分ない。5年の副総裁の経験を通じて、組織運営にも長じた。ところが、「若田部総裁による日本救国」の可能性など1%もなく、次期人事をめぐる暗闘は中盤戦から終盤戦に差し掛かるところだ。リフレ派の排除は9分9厘、仕上がったとの兆候がある。  どういうことかを解説する前に、日銀人事とはどのようなものかを知っていただきたい。
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日銀総裁は官僚が勝手に決めてきた
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