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「代わる人がいない」という理由だけで、死に体の政権が続く日本/倉山満

イギリスの失敗を日本に当てはめるなど、算数ができないのか?

 日本はようやく2%のインフレ率を超えるか超えないかのデフレに苦しんでいる。今こそ減税と規制緩和の出番だ。民の活力を高めて景気を刺激する時だ。一方のイギリスは、10%の物価上昇に苦しんでいた。行き過ぎた経済を引き締める時で、インフレファイターの出番だ。そんな時に減税と規制緩和でカンフル剤を打つべきではないに決まっている。  トラスが問題なのは、インフレ時にインフレ政策をしようとしたことで、破綻するに決まっている。2%と10%。数字が違うのだから、イギリスの失敗を日本にそのまま持ち込むなど、算数ができないのかとしか言いようがない。  関係が無い話でも結び付けて、増税と規制強化で民の活力を奪おうとする者たち。恐るべし。金融緩和に反対している連中の理屈など、この程度だ。

イギリスにも問題はあるのだが、日本よりマシ

 それはそうと、政策の誤りがあれば政権交代が起きるイギリスは、羨ましい。日本など、政権与党の首相が何度間違えても、「他に代わる人がいない」という理由だけで、死に体の政権が続く。  ただ、イギリスにも問題はあるのだが、日本よりマシだ。国柄も似ているので、学ぶことが多い。  まず、トラス後任のリシ・スナク現首相まで、6年間で5人の首相を与党保守党が輩出した(数え方によっては12年間で6人だが)。これに対して野党第一党の労働党は「即座に解散総選挙を」と求めている。「保守党は政権担当能力を喪失したのだから、政権に居座りたければ民意を問え」との理屈だ。

スナクも「麻生の道」を歩みかねない

 だが、保守党はこんな時期に総選挙をやれば負けるに決まっているので、粘れるだけ粘る気満々だ。態勢を回復して人気が出た時に解散総選挙を打つ。衆議院の任期は2年あるのだから、その間になんとかすればいい、と考えているようだ。  まるで日本の自民党だ。’08年、時の麻生太郎自民党内閣は、劣勢のまま解散総選挙の機を失し、1年後の任期満了選挙で大敗、下野に追い込まれた。もっとも、その民主党が自民党以上に無能だったので、国民には政権交代恐怖症が染みついてしまったが。このままいくと、スナクも「麻生の道」を歩みかねない。  だが、日本では1955年以降、自民党は二回しか政権失陥していないし、すぐに奪還した。
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「政権担当可能な政党」を持つイギリスを、日本人として羨ましがらざるを得ない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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