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迫り来る食糧危機という現実。日本人7200万人が餓死する!<経済学者・鈴木宣弘>

反対論に答える

―― 農業政策の議論では「食料自給率をあげる必要はない」という反対論も根強くあります。たとえば、食料自給率をあげると日本が不作に見舞われた時に食料が確保できなくなるため、食料の輸入先をより多角化すべきだという声があります。 鈴木 海外に依存していても不作のリスクは同じです。少数の食料生産国が不作になれば、多数の食料輸入国が飢えることになります。また、輸入先を多角化しても、緊急時には輸送が停止したり中国に買い負けるリスクがあります。  そもそも「お金があっても食料が買えない事態にどう備えるか」を議論しているところで、「色んなところから食料を買えばいい」というのはナンセンスです。 ―― 日本は農業生産額世界第10位の「農業大国」だという指摘もあります。 鈴木 農家の方々の経営努力は素晴らしいと思います。ただ、農業生産「額」と農業生産「量」は全く別の議論です。  確かに日本の農業生産額は世界トップクラスですが、カロリーを生む穀物自給率は28%で先進国最低レベルです。高級サクランボが売れれば生産額はあがりますが、飢餓が起きた時にサクランボばかり食べるというわけにはいきません。農業生産額が高いからといって、農業生産量が低くてもいいということにはならないのです。 ―― 政府が農業を保護するのは統制経済だという批判もあります。 鈴木 それをいうなら、欧米こそ統制経済です。欧米は表向き自由経済を掲げていますが、現実には政府が介入して農業を手厚く保護し、補助金漬けの農産品を輸出しまくっているのです。日本もそうすべきです。 ―― 農水省は予算を取るために危機を煽っているといわれています。 鈴木 その指摘が正しいならば、コロナやウクライナ戦争の影響で離農が加速しているいまこそ、農水省は予算を取りにいくはずです。しかし、そうした動きは全く見られません。  すでに食料危機が始まっているのだから、むしろ農水省はきちんと危機感を喚起して食料安全保障のための予算を取りにいくべきです。 ―― 有機農業は生産性が低いため、既存の人口を養うことができないともいわれます。 鈴木 化学肥料農業から有機農業へ転換すると生産量が半減するとよくいわれます。しかし、日本には有機農業のノウハウが蓄積されており、化学肥料農業と同じかそれ以上の生産量をあげている有機農家も少なくありません。そうした知見を集めれば、有機農業の生産性を高めることは十分可能だと思います。化学肥料農業が限界に近付いている以上、その可能性を追求していくべきです。 ―― 私たちにできることは何でしょうか。 鈴木 食料安全保障を支えるのは農家です。日本の農家は過保護だと批判されますが、実際には政府の支援がほとんどない中で生き残ってきた精鋭揃いです。そして、その農家を支えるのは私たち消費者です。私たち一人一人が危機感を共有して「何を買って食べるのか」という行動を変えれば、現在の状況も必ず変えることができます。  私が希望を感じたのは、新著の読者から「自分たちに何ができるのかのヒントを見つけることができた」という声が沢山届いたことです。本誌の読者にも、ぜひ参考にしていただければ幸いです。 (12月2日 聞き手・構成 杉原悠人) 初出:月刊日本2023年1月号
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2023年1月号

特集①岸田総理の憂鬱 この内閣はいつまで持つのか
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飢餓・農薬 日本人の命が危ない!

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