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「路上で石を売っていた」元芸人が、100人のホームレスを取材するまで

リモートワークを経て一念発起

――今の活動を思いついたのはなぜ? 青柳:その後は芸能事務所の仕事を辞めてネット通販の会社に入ったんですが、入社して1年ぐらいでコロナが起きてリモートワークになり、家のなかで過ごす時間が増えたんです。そうすると、何かやりたいという思いがむくむくと芽生えてきて、同時にふとチョコレートをあげようとしたホームレスに対して抱いた疑問が蘇ってきたんです。 コロナでホームレスの人も増えるだろうし、話を聞くならこのタイミングしかないなと。それでAmazonでカメラを買って上野公園に撮影に行ったんです。もともと石の路上販売や芸人としての活動をYouTubeにアップしていたので、動画の撮影や編集には慣れていたのも大きかった。

続けるためにも「再生数を気にしない」

――これまでの取材者数は? 青柳:100人ぐらいです。週1本のペースで動画をあげて3年経つので、150本ぐらいになりました。アップのタイミングが少しでも遅れるとすぐに業者から「編集を外注しませんか」という営業メールが届くのですが、僕にとっては編集も楽しい作業なんですよね。 撮影した素材をどうやって組み合わせていこうかと考えるのは、お笑いの台本作りとよく似ているんです。20代の頃に憧れた映画作りの仕事にも近い部分があり、1本100円で映画を見まくった経験が、ここにきて生かせているとも思います。 ――ユーチューバーとして気をつけていることは? 青柳:お笑いの動画をアップしている頃は、徹夜で編集して泥のように寝て起きて、さあどれぐらい再生されているかなと思って見ると、たった3回なんてこともザラでした。しかも、そのうち2回は自分のクリックですからね。結局、精神的にもすごく疲れてしまった。 その経験から、ホームレスの人を撮影する時は、「数字なんかどうでも良いからライフワークとしてやろう」と決めていました。本業として会社員の仕事もしていたので、収益化にこだわる必要もなかったんです。そしたら1本目の動画がすぐに500回ぐらいになり、その次もポンと数字が伸びたんです。 ユーチューバーって再生数に溺れそうになるところがあると思うんですが、だからこそ「再生数は気にしない」という思いが僕の根っこにあります。自分の知りたいこと、聞きたいこと、撮りたい人を優先しようって。でないと、継続できないと思ったんです。 あとは、取材対象がホームレスなので俺が幸せそうな姿はあまり出すべきではないだろうなと思っています。妻や子供と楽しい時間を過ごしている姿を出すことは、きっとみなさんを不快にさせるだろうなと。
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「ホームレスをバッシングする人」に思うこと
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