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「路上で石を売っていた」元芸人が、100人のホームレスを取材するまで

新刊のテーマ「ネオホームレス」とは…

――著書に登場する「ネオホームレス」とは、どういう人? 青柳:帰る家がないわけではないけれど、色々な事情で路上生活を選んでいる若者がいるんです。金銭的な理由というより、家族関係の問題など、精神的な理由が大きいようです。一般的なホームレスとは違うジャンルの存在として時代性を感じ、書籍という形で掘り下げたいと思いました。 ――家庭に問題があるというのは、虐待などですか? 青柳:実際に深刻な虐待を受けていたり精神的に傷を負っていたりする子がいるのは事実なのですが、一方では、客観的には普通の家庭に見えるケースもあります。ちょっとしたボタンの掛け違いから親子関係がうまくいかず、虐待を受けていると主張して路上生活を選ぶ子もいます。本当にさまざまなタイプがありますが、精神的に何か満たされていないという点は共通していると思います。

「ホームレスをバッシングする人」に思うこと

――ホームレスに対してネット上ではバッシング的な言葉も多いですが、どう思いますか? 青柳:動画のコメント欄を見ていると「社会的にちゃんとしているかどうか」という物差しでしか他人を測れない人が、今はすごく多いように見えるんですよね。 バンドマンや芸人をやっていた頃を思い出すと、ろくに仕事をしてなかったり社会人としては全然ダメだったヤツが、びっくりするほどかっこいいメロディーを鳴らしたり、ステージの上で観客を沸かせたりすることがありました。覚醒剤で捕まった経験のあるセクシー女優の女の子が、映像のなかで華のある姿を見せて輝く瞬間もある。 他人を評価する物差しは決して一つだけではなく、役に立つとか立たないという価値観とは別の物差しにも、目を向けてもらえたらと思うんです。そりゃ自分でお金を稼げれば一番良いんですけど、それがすべてではないんじゃないかなって。 別に大した能力がなくても、例えば「この人と話していたら落ち着くな」というだけでも、その人の持つ立派な価値だと僕は思います。最近は、動画を見た人から「世の中の見方が変わった」「知らない世界を教えてくれてありがとう」と言われることも増えてきました。最初は単純な好奇心から始めた活動だったんですが、今では世の中に伝える意義みたいなものも感じられるようになりました。 <取材・文/西谷格>
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