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維新の履いた「下駄」~菅義偉と在阪メディア<著述家・菅野完>

在阪テレビ局の影響

 ここまで、東京都内自治体選挙における維新の躍進と、各地の知事選挙における維新の連戦連勝を振り返った。ここまで振り返ったように、その双方で維新は「躍進」をとげているものの、その勝因は全く別のところにある。そしてその勝因は双方とも「政策が評価された」わけでも「既存政党への批判票」なわけでもない。都内の選挙では広告戦略が、知事選挙ではどの知事選挙もことごとく保守分裂であったことが要因だ。  もうひとつ、維新が躍進を遂げた地域がある。お膝元とも言える近畿地方各県での首長選挙・国政補選・自治体議員選挙だ。とりわけ和歌山での衆院補選の結果は強烈だった。自民党側が、各地の知事選挙のように分裂含みだったわけでは決してない。むしろ自民党公認・門博文陣営は、鉄壁と言っていい組織選挙を展開した。選挙戦の最中には、応援にかけつけた岸田総理の暗殺未遂事件が起こり同情票さえ獲得する勢いだった。  しかしである。蓋をあければ、維新の圧勝。維新側の選挙といえば、日程をこなすことさえままならない不甲斐ない選挙戦だったにもかかわらずにだ。  近畿地方における維新の強さをテレビに求める議論は、いささか古めかしくなっていることは十分承知している。しかしこの和歌山補選の結果をはじめ、近畿地方各地における維新の「異様な勝ち方」はやはりテレビの影響を無視して総括することはできないだろう。  維新の会が自民党をも凌駕するような徹底したドブ板選挙をやることも認識している。とりわけ大阪府内では駅立ち・個別訪問・ポスター営業など古典的な選挙手法を、自民党の数倍の規模で徹底しているのも直接取材し確認している。が、それでもやはり、「ろくに選挙活動すらしていない候補者が、維新公認の看板だけで当選している」事例は、前掲の和歌山補選をはじめ、枚挙にいとまがないのも事実だ。  地上波テレビ在阪各局が、決して「ローカル局」ではないことがその最大の原因だろう。通常、「ローカル局」の放送範囲は道府県ひとつにとどまるが、在阪各局はそうではない。東は岐阜と滋賀の県境から、西は兵庫と岡山の県境まで広大な面積をカバーしている。したがって業界内では「ローカル局」ではなく、「準キー局」と呼ばれる。しかし「在阪」であるため、自然と、題材は大阪が中心。とりわけこの直近3年はコロナ対応の説明との名目で、大阪府の吉村知事が、連日、在阪各局に出演し続けた。  しかし前述のように在阪各局は決してローカル局ではない。その電波は大阪の外にも流れている。米原から姫路、舞鶴から新宮までの広大な面積の人々が、連日、吉村知事の顔を見続けたのだ。その「選挙効果」が絶大であろうことは容易に想像できよう。  本来であれば、「在阪テレビ局の影響」についていますこし本稿で踏み込みたいところであったが、次回以降、さらに在阪地上波テレビ局のある種の「異常性」について解説していきたい。 <文/菅野完 初出:月刊日本2023年7月号
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月刊日本2023年7月号

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