仕事

“戦力外”の元プロ野球選手の1年後。“本職”の清掃業で「過去を超えたい」と思えるようになるまで

「本気で頑張ろうとしているのが見えた」

半藤航

株式会社ワザビトの代表取締役・半藤航さん

 そんな滝野さんのYouTubeを見て興味を持ったのが、現在の勤め先である株式会社ワザビトの代表取締役・半藤航さんだ。 「あまりプロ野球は詳しくなくて、ドラゴンズ時代のこともよく知らなかったんですが、YouTubeで清掃業のことを言っていたので、最初は純粋に仕事をお願いしようと思って連絡したんです。当時、彼はまだ愛知にいたのですが、わざわざ東京まで学びに来てくれて。これから本気で頑張ろうとしているのが見えたので力になりたかったんです」(半藤さん)
半藤航

「今後は会社の中心になって活躍してほしい」と期待を寄せる

 その後、半年ほど愛知の仕事をふっていたというが、9月からは正社員として東京で働いているという。半藤さんも滝野さんの真面目な働きぶりに太鼓判。 「やっぱりスゴかったんですよね。野球でプロになるだけあって、“物事に取り組む姿勢”がぜんぜん違う。いわゆるホウレンソウ(報告・連絡・相談)とかもしっかりやるタイプで。人間なので、だれでもラクしたいと思うものですが、彼は仕事をお願いしても『面倒くさい』とか『キツい』とか言わず、すぐに『やる』と答えるので、さすがと思いました」(同上)

プロ野球選手を辞めてから「やっと腹を決められた」

特殊清掃

特殊清掃用の防護服を着た滝野さん

 滝野さんが入社するまでの期間を改めて思い返す。 「今年は年明けから名古屋で野球塾の先生をしていましたが、それは夕方から夜の間だったので。日中の“本職”を見つけたいと思っていたんです。  清掃業と一口に言ってもそれぞれで違うんですよね。掃除のやり方や、汚れによってどんな薬剤を使うのか。それをきちんと習得したくて。いくつかの業者さんを見てきたのですが、うちの社長はめちゃくちゃ細かいんですよ。でも、綺麗にする上ではそれが本当に大事で。東京に行って本腰を入れてやりたいと思ったんです。絶対に将来のためになるので、今はしっかりと仕事を覚えて。だから、キツくてもキツいなんて言ってられない」  プロ野球選手を辞めてから約1年の月日が流れたが「やっと腹を決められたんですよ」と声を弾ませる。 「いただいた仕事はしっかりやってきたつもりなんですが、自分の“本職”って一体なんだろうって。心のどこかで“これからどうなるのかな……?”ってモヤモヤした気持ちがあったので」
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お客さんから「元ドラゴンズの滝野選手ですか?」
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明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi

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