更新日:2023年11月15日 20:06
エンタメ

『アメリ』を「間違えて」買い付けた56歳の映画プロデューサーが“余命半年”のいま語る、映画業界に残した功績

「1億円の生命保険」に加入させられかけた!?

――そんな絵に描いたような「ギョーカイ人」だった叶井さんですが、2010年には自身で設立したトルネード・フィルムを破産させてしまいます。ちょうど、その前後で倉田氏と結婚していると思うのですが、会社が破産、さらに自己破産すると、どうなるんですか? 叶井:やっぱり、何人かには距離を置かれたよ。3億円を踏み倒したわけだからね……。それは怒るでしょう。しかも、借金を踏み倒しながら、映画業界にいるわけだから「ありえない!」と思っている人はいまだに多いだろうね。 とある制作会社には800万〜1000万円の未払い金があったから、「1億円の生命保険入ってくれ」と言われたこともあった。1億だから月に30万〜40万円の掛け金がかかるのに、それを向こうが払うというんだよ。 ――なんでそんなことするんですか? 叶井:「お前が死んだら、1億円そのまま受け取る」と言われたね。「いや、御社への未払いは1000万円くらいじゃないですか!」と言ったら「長年の利子です」と返されてしまった。ヤバくない?(笑)

「1万円でチャラにするか、自己破産を選んでくれ」

エンドロール!

『エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』(サイゾー)

――そうやって、叶井さんの元を去る人がいる一方で、例えば200万〜300万円近くの未払いがあった江戸木氏には「後でもっと払いますから」と言ったことで、その後も仲良くしてもらえたんですよね。 叶井:人によって未払いの金額が違うから、一人ひとりに挨拶に行って「1万円でチャラにするか、俺が自己破産するから、それで溜飲を下げるか選んでくれ」と言ったんだ。 ――叶井さんが自己破産したところで、相手にメリットはあるんですか? 叶井:いや、「自己破産を反省と捉えてほしい」ということだね。 ――どちらを選んでも未払いは解決しないじゃないですか……。 叶井:まぁ、実際そうとしか言えなかったからさ。
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未払い先200社に借金を返済する日々
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編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
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