平成ギャルがトレンドになっている昨今。見た目だけではなく精神性にも注目が集まり、ポジティブに自分らしさを貫くマインドが支持されているという。そうした再ブームで気になるのは、かつて渋谷センター街を賑わせていたギャルたちの今だ。10代・20代を謳歌していた彼女たちは、年齢を重ねてどのような女性になっているのだろう。
元『egg』モデルのゆまちさん(35歳)<撮影/藤井厚年>
ギャル雑誌『egg』で人気を博した
ゆまちさん(35歳)。00年代後半〜休刊直前まで、18歳から6年9ヶ月にわたって読者モデルとして出演し続けた。本誌卒業から10年近く経つというが、すらっとした抜群のスタイルに、金髪のロングヘア、クールでパッチリとしたアイメイクは健在。現在もギャルであり続けている。そんなゆまちさんに当時を振り返ってもらいつつ、今でもギャルに惹かれる理由について話を聞いた。
ギャルになりたいけどなれなかった学生時代
eggモデルデビューを果たしたのは社会人になってからという遅咲きだったゆまちさんが、ギャルを好きになったきっかけは何だったのだろうか。
「高校に入って一気に変わりました。みんなルーズ(ソックス)履いてるし、金髪にしてるし、強そうなのに可愛くて。地元では出会ったことがない人たちばっかりがいたんですよね。私もあの人たちみたいに垢抜けて可愛くなりたいってすぐに思いました。ギャル雑誌を買うようになったのもそれからです」
高校入学と共にギャルに目覚めたゆまちさん。しかし、厳しい両親からは髪を染めることはおろか化粧をすることすら禁止されていたという。思う存分ファッションを楽しむ友人の横で、我慢を強いられることも多かった。
その影響もあってか、ギャルに対する憧れはさらに高まっていく。両親から「就職すれば何をしてもいい」と言われていたゆまちさんは、高校卒業してすぐに外見を規制されない職場に就職。欲望が溢れ出したかのように、髪を明るくし、盛りメイクを施し、ネイルも派手にしたりと、思いっきり羽を伸ばした。
「肌を綺麗にみせたいとか、鼻を高くしたいとか。コンプレックスをどうにかしたいと思って盛っていくと、結果的に世間から“ギャル”と言われるような見た目になるんです。
ギャルメイクをすれば好きな自分に変われて自信を持てました」
そうしてギャル生活を満喫していたある日、ゆまちさんに転機が訪れた。
人気モデルになっても尽きない不安「若くて可愛い子がどんどん出てくる」
読者モデル時代のゆまちさん(左)と、親友の愛奈さん(右)。2人はCDデビューも果たした<提供写真>
「たまたま渋谷109の前にいたら、eggの編集部員から声をかけられて、スナップの企画に出ることになったんです。撮影されて喜んでたら『来月もあるからまた出てよ』って言われて(マジか……)みたいな。また呼んでもらえるなんて思わなかったから驚きましたね」
この日を境にモデルとしての活動が始まった。大好きな雑誌にまた出たいという一心だったゆまちさんは、自身の個性を探し出し、読者を惹きつける見せ方を必死に研究したという。
スカウトされるほどのポテンシャルがある上に、向上心もあってギャル愛にも溢れている。人気に火がつくのは時間の問題だった。読者から「ゆまちボディになりたい」と言われる細身スタイル、強かさと愛らしさを兼ね備えた容姿、親しみやすいキャラクター……次第にeggの看板モデルとしてカリスマ的存在になっていく。その人気は雑誌の域を超え、アパレルブランドのプロデュース業、さらには歌手としてCDデビューも果たすなど、目まぐるしいほどの飛躍を遂げた。
2009年9月号ではピン表紙に(株式会社 大洋図書/egg編集部)
しかし人気絶頂の最中であっても不安は消えなかったという。eggは中高生をメインとしたギャル雑誌でもある。ゆまちさんが活躍する一方で、新人モデルたちが次々と頭角を現していたのだ。
「
若くて可愛い子がどんどん出てくるなかで、自分は歳を取っていく。読者からいつまで応援してもらえるかもわからない。どれだけ仕事をもらえても、次撮影に呼ばれなかったらって常に不安でした。歌手になれたのもブランドプロデュースできたのも、“eggモデル”だったからこそですし、
雑誌に出られなくなることが一番怖かったですね」
当時から多様化は進んでいたとはいえ、まだ「ギャルはティーンのもの」という価値観が強かった。たった1年でもトレンドはあっという間に変わってしまう。競争が激しい世界で先輩や同期は続々と巣立っていった。
そんななか、ゆまちさんもまた20代半ばに近づくにつれて、徐々に出番が減っていったという。
「気づいたら全盛期はとうに過ぎて、若い子がメインを張るのを見守るおばさんみたいな感じになっていました。同期もいなくなっていくし、後輩の中でポツンとひとりだったので、寂しかったですね。カルチャーと時代の移り変わりで、自分もそろそろ終わりだろうねって」