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飼い犬に「骨付きチキン」を与え病院送りに…“ペットの人間扱い”を手放しに歓迎できない理由

ペットのためを思ってあげたサプリが健康被害に繋がることも

 情報の洪水時代ともいえる現代、ネットを漁ればどんな飼い主でも情報に行き当たるが、そのほとんどは出処不明のものだ。ペットを思うが故に、誤った情報に踊らされるケースも散見されるという。 「性質のよくわからないサプリメントを『身体にいい』と信じて大量にあげる飼い主も少なくありません。よく成分を読むと、製品名が異なるだけで中身が重複していることもあり、一歩間違えば健康被害に繋がることもあります。純粋な『やってあげたい』という動機によるものであっても、結果的にペットを痛めつけることになりかねないので、確かなエビデンスを持っている獣医師を頼ってほしいと思います」

「保健所に連れていきたい」という相談も

 また、ペットに対する「かわいい」という感情だけが先走り、実態を知らずに飼い始めるパターンも要注意だという。 「よくある相談としては、『こんなに泣き声がうるさいと思わなかった』『うんちが臭くてびっくりした』というライトなものから、『思ったより飼育費用がかかって困っている』『病気になってどうしていいかわからない』という重たいものまでさまざまです。いずれも、動物の実際を知らずに飼い主になってしまったことによるもので、場合によっては飼育放棄に繋がりかねない深刻なものです。事実、もてあましたペットを『保健所に連れていきたいのですが』という相談に出くわしたこともあります」  獣医師である以上、ときに非情な提案をしなければならない場面もある。 「病状が重く、ペット本人がつらくて仕方ない場合は、残念ながら安楽死を提案しなければならない場面もあります。飼い主になるというのは、良い局面ばかりではなく、ときにつらい選択をしなければならないこともあるのです。逆に病状はそこまで重たくなくても、病気になってつらそうな姿をみた飼い主が『安楽死させたい』ということも稀にあります。私たちは『一般的なケアで維持が可能なものなので、諦めないでください』とお伝えするようにしています。かわいいペットのつらそうな姿をみて一時的に出てしまった言葉だと思いますが、とても悲しい気持ちになります」
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多くの犬を救うため、専門を極めることに
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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