ライフ

飼い犬に「骨付きチキン」を与え病院送りに…“ペットの人間扱い”を手放しに歓迎できない理由

高齢者は「死後の預け先をどうするか」を考えるべき

 数十年前と比較し、2倍にもなったといわれるペットの寿命。高齢者がペットを飼う場合、飼い主の寿命を超えて生きるペットが珍しくなくなった。こうした問題について、獣医師の視点からどのように考えるのか。 「ペットの寿命の延伸についてはさまざまな要因があると思いますが、やはり医療の発展と栄養の改善だと私は考えています。昔は人間が余らせた味噌汁にご飯をかけた猫まんまを食べさせるのが一般的でしたが、現在は栄養学の観点から考え込まれたペットフードが多数登場していますよね。それらのなかには手放しに良いと言えないものもありますが、一定程度、健康に寄与しているのだろうと考えています。  高齢の飼い主が先に寿命を終えてしまうという問題についてはよく指摘されますが、私は高齢者であってもペットを迎えることに問題はないと考えています。むしろペットを愛でることでQOLが上がり、飼い主の生きがいに繋がる場合も多いのです。きちんと考えるべきなのは、自分の死後、ペットの預け先をどうするかということです。親戚の家だったり、ペットの介護施設だったり、各々の選択で良いと思いますが、金銭面を含めてそのための準備を整えることこそ、ペットへの愛情なのではないかと考えています」  幼き日に経験した愛犬の闘病・介護生活と、対峙した生命の物語を目に焼き付け、一心不乱に獣医師への道をかけ進んだ佐藤氏。だからこそ氏の指摘は、漫然と描く“ペットとのハッピーライフ”をときに打ち砕く。それなのに、飼い主はその言葉に首肯せざるを得ない。それは専門家という神壇からではなく、ペットを愛する同志の目線で紡ぎ出す真心を感じ取れるからではないだろうか。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
1
2
3
4
5
おすすめ記事
ハッシュタグ