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飼い犬に「骨付きチキン」を与え病院送りに…“ペットの人間扱い”を手放しに歓迎できない理由

多くの犬を救うため、専門を極めることに

 獣医師は常にペットの生き死にに関わる続けるシビアな仕事だ。佐藤氏が獣医師を志したのは、中学生時代にさかのぼる。 「小学生のころから飼っていた犬がいました。私が中学生になると、後ろ足が動かなくなり、四足歩行が不可能になりました。獣医のところへ連れていきましたが原因がわからず、家族で途方に暮れ……。そのとき、ペットの病気を治して生命を救う仕事に取り組みたいと思ったのです。幸い、家族でマッサージなどのケアを行ったことで、愛犬は生き延びました。動かなかった足も徐々に動かすことができるようになりました。大学の獣医学部に入学してからも頑張ってくれて、研究室で愛犬の相談をしたところ、神経科の専門医から紹介された薬によってすっかり病状が良くなったのです。そのとき、専門性があることの強みを身をもって感じました。犬の死亡原因は1位ががん、2位が心臓病。私は、循環器のスペシャリストとして、多くの犬を救えるように研鑽を積む道を選びました

獣医師は「動物全般を診る」からこそ

 獣医師という1つのライセンスで診る動物は、実に多種多様だ。だからこそ、佐藤氏は専門性を求めた理由についてこう語る。 「医師が人間を診るのに対し、獣医師は動物全般を診ます。もちろん、すべての動物に精通して、救える獣医師になれればそれが最も素晴らしいでしょう。しかし現実には、それぞれの動物は臓器の形状も身体の構造もまったく違い、それは不可能です。私は、守備範囲を広く浅く設定するのではなく、犬猫に限定しました。困っている犬猫と飼い主のために、なかでもとりわけ重要な臓器である心臓とその周辺についての知識を活かしたいと考えたのです」  佐藤氏はかつて外科の執刀も行っていたが、手術が必要になる状態にいく前に健康状態を立て直すことの必要性を感じ、現在は循環器内科の領域で犬猫を診ている。
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小型犬でも「散歩したほうが良い」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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