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元ガールズ女王が「グランプリまでの過酷な一年」を語る。休みなく続く‟熾烈な争い”の舞台裏

 ガールズケイリンの人気筆頭格として、1つの時代を牽引してきた高木真備さんに、競輪にまつわる話を語っていただく連載企画。高木さんは一昨年の末に開催された「オッズパーク杯 ガールズケイリングランプリ2021」で見事に優勝。年間賞金女王の称号を獲得し、「やり切った!」という気持ちで昨年5月に選手を引退。現在は保護犬・保護猫活動を行っている。  そんな高木さんに元ガールズケイリン選手としての様々な裏話を聞いていく当連載企画。今回は「グランプリ出場までの過酷な一年」についての話を聞いた。

グランプリを目指す選手の過酷な1年

高木真備さん

2020年のグランプリに出場した際の高木真備さん 
提供/公益財団法人JKA

 12月28日(木)から開催されるKEIRINグランプリ2023。ガールズグランプリは、2日目の29日に開催される。  出場が決まった7選手のうち、3選手はG1勝者。そして他の4選手は賞金ランキング上位選出となった。結果的に賞金ランキング上位選出のボーダーラインとなった、5位の吉川美穂選手と6位の石井寛子選手の賞金の差は、わずか26万2500円。これは通常開催の決勝ひとレースで順位が入れ替わる金額差であり、グランプリの出場枠を巡る争いが“いかに熾烈であるか”がわかるだろう。  賞金ランキングの争いは、その年の元旦から競輪祭が終わる11月末頃までが対象期間。過去に5回、賞金ランキング上位選出でガールズグランプリに出場している高木さんによると、グランプリ出場を目指す選手にとって、その戦いの意識は元旦から始まっているという。 「グランプリで優勝できなかったり、ギリギリで出られなかった選手たちは『来年こそ絶対に!』と思っています。私は、年末年始に休むのは、前年のグランプリが終わってから大晦日までの3日間くらいでした。そういったときに、競輪の“オフシーズンがない大変さ”を感じていましたね。でも、その勢いで懸命に走り続けていたら、2~3月くらいに疲れが絶対に出てきます。初出走から頑張って1着が続いていても、なにかの拍子に切れる感覚があったので、そこが大変でした」

グランプリに出るためには「耐えるしかない」

 今年から3つのG1が新設されたガールズケイリン。選手にとって、グランプリを目指すうえでの幅が広がったわけだが、現在は枠の半数以上は賞金ランキングの上位から選出されるため、一年間戦い抜くことが「グランプリを目指すうえでの基本」となることは変わらない。特に高木さんの現役時代は、賞金ランキングの上位のみでグランプリ出場者が決まった年もあり、調子が悪くても一年間戦い抜くことが重要だったそうだ。 「ひとつの開催でも欠場したら賞金ランキングに響くし、なんなら優勝できなくて決勝2着でも順位が入れ替わっちゃうんですよね。だから、疲れがみえてきたり調子が悪くても、グランプリを目指すなら耐えるしかなかったです。いつもがギリギリの戦いだったときは、ちょっとでも気持ちを落ち着かせちゃったら負けちゃうので、モチベーションを保ち続けることは難しかったですが、脚力がついてきて、競争得点上位になれた頃からは、少しリラックスしてレースができるようになりました」
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秋からは「ひとつも落とせない熾烈な争い」に
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Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント
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