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焼肉業界“閉店ラッシュ”の中で「焼肉きんぐ」「牛角」2大食べ放題チェーンが堅調である理由

幅広い世代に好まれる焼肉食べ放題

 焼肉食べ放題店は競争が激化しており、差別化が困難になっている。そうなると、肉質の勝負となるのは当然だろう。スケールメリットによる仕入れ力の差が、素材提供型の店だけに、優勝劣敗を決める主要因になる。  昔は米国の牛肉パッカーからすれば、日本は大量の牛肉を買ってくれる上得意客的な存在で優位性があったが、今は中国や韓国に買い負けしているのが現況だ。そこに円安などの要因が加わり、安くて品質の高い肉の仕入れが困難になっている。さらに仕入環境の悪化や人手不足などの厳しい経営実態がある。  物価高や原材料価格の高騰などが続く中で、米国産の牛肉価格もさらに高騰中だ。焼肉食べ放題店が使用する牛肉は米国産などの輸入牛がほとんどだからである。牛肉以外も高騰しており、例えば豚肉も高くなっている。豚肉は輸入・国産ともに高騰している。今後もさらに値段が上がる可能性があるようだ。  その原因は①円安により輸入豚肉の価格が上昇して国産への引き合いも強まる、②去年の夏の猛暑で出荷頭数が減少、③輸入飼料代の価格高騰などである。また、焼肉と言えば白米が合うが、そのお米も昨年の猛暑で弾力性があり食べ応えのある1等級が不足している。これから夏休みを迎える中、焼肉食べ放題を提供する店は大変だろう。

意外と厳しい経営実態

焼肉きんぐ 焼肉食べ放題店は週末のファミリー客を標的顧客に選定しているから、郊外立地の大型店が多い。焼肉はテーブルごとに無煙ロースターやダクト工事が必要で、坪あたりの投資額は100万円程度と言われ、他業態と比較すると初期投資の負担が大きい。  いくら坪当りの賃料が低いとはいえ、駐車場を含めた広さが必要だから、大型店は固定費の負担が大きい。だから、営業利益率5%程度と小型店の10%程度と比較すると利益率は低い傾向にある。もちろん利益率が低くても売上が大きい分、利益額は多くキャッシュは回り、現金創出マシンとしての役割は果たしている。  焼肉に限らず、外食店はイニシャルコストとランニングコストの低減に力点を置き、投資回収速度を早める計画を策定する。しかし、現在の資材や厨房設備など出店コストが高騰する中で、値上げが思うようにできず、経営はより厳しさを増しているのが実情だ。
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食べ放題を導入するメリット
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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