44歳で「ヘビの刺青」を入れた女性の壮絶な半生。両親の死を経て「今がもっとも楽しい」
その女性の左肩から左腕には、2匹のヘビが絡みつくように彫られている。都内SM店に勤務しながらショーパフォーマーとしても活躍している、緒月月緒(おづきつきお)さんだ。今年47歳になる彼女は、「18歳から風俗業界に入って、ちょうど来年30周年を迎えるところです」とおどけた。
緒月さんがヘビを身体に宿したのは44歳のときだ。父と母の死、残る家族との絶縁などを経て、人生の区切りの意味で刺青を彫った。その壮絶な半生を辿る。
都内に生まれた緒月さんには、幼いころから疑問があった。
「私は4人きょうだいの一番上なのですが、昔から私にだけ母の対応が違うのが疑問でした。たとえば、同じようなことをしても私だけがやたら怒られるんです。母から暴力を振るわれるのも、決まって私でした。あるいは、家族で外食に出掛けても私だけ留守番をさせられたりもしましたね」
他のきょうだいとは違う。その疑問が解決したのは、かなり後年になってからだ。
「20歳を超えたころ、自分が父からは生まれない血液型であることを知って、わかりました。育ての父は本当の父ではなかったんです」
ややこしいのは、育ての父が自分の本当の子どもではない緒月さんのことを可愛がっていた点だ。
「母が私に辛く当たるのは、父から可愛がられていた私に対する嫉妬だったらしいのです。父は粗暴な人で、気持ちをうまく言語化できないところがあり、けれども愛情深い人でもありました。たとえば大切なセキュリティコードなどは、いつも私の誕生日にするほど、可愛がってくれていたんです。私が9歳のときに父と母は離婚をするのですが、それからも毎月交流は続きました」
母親が離婚すると、すぐにその家には別の男が転がり込んだ。そこで緒月さんは信じられない経験をする。
「最初は身体を触るなどの行為だったものの、徐々にそれがエスカレートし、その男性は年端もいかない私を犯しました。非常に不愉快な体験です」
きょうだいのなかで「私だけがやたら怒られる」
「育ての父」は「本当の父」ではなかった
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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