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日本が落ちぶれたのは「変わり者」を排除したから?わが国で“多様性”が浸透しない背景を生物学者が解説

日本は均一な人材の「大量生産」に成功してしまった

人形 そうなるとそれを担う労働者にも個性は不要で、ひたすら同じことを効率よく行う能力が求められる。だから、変な主張などしたりしない、勤勉で従順な労働者はまさに理想的なのである。  日本が欧米のマネをしながら家電や自動車などを製造し、それをより安くより大量に販売することによって世界第2位の経済大国にまでなったのも、日本人の一様に真面目な気質が環境に見事に適応し、一気に国際競争力を高めたからだ。  そのような日本人の均一化を実現させたのは、発想や頭脳の多様さを抑圧するかのような、横並びで画一的な教育である。  教科書通りに遺漏がないようすべて教えろとか、必ずこの教材を使えとか、こういう手順を踏んで教えろといった平準化した教育が徹底して施され、変な個性を発揮されたりすると面倒なので、校則などのルールで拘束して無理やり型にはめようとする。  そうやって、そこそこの能力を持つ均一な人材を文字通り「大量生産」することに成功した日本は、まさに「多様性のないこと」で短期的な繁栄を成し遂げたのだ。

イノベーションを起こすのに必要なのは個性的な頭脳

 ところが、コンピュータとインターネットが発達した1990年代頃から、世の中は尋常でないスピードで変化していく。  そのような環境の中では、既存の商品を一定の品質でたくさん生産したり、それより少し品質の高い商品を作ったりするようなことでは太刀打ちできない。  これまで世の中に存在しなかったまったく新しい製品を生み出せるかどうかが勝負なのだ。0から1を生み出すようなイノベーションを起こすのに必要なのは、普通だと考えつかないような規格外の発想ができる個性的な頭脳である。  新型コロナウイルスの検査法ですっかり有名になったPCR(Polymerase ChainReaction /ポリメラーゼ連鎖反応)法を開発し、1993年にノーベル化学賞を受賞した生化学者のキャリー・マリスも、かなりユニークな人物だったようで、PCR法のアイデアも、当時勤務していたシータス社の職務とは直接関係はなく、当時つき合っていたガールフレンドとドライブをしていたときに突然ひらめいたのだという。
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PCR法開発者も「エキセントリックな思想」の持ち主だった
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1947年、東京都生まれ。生物学者。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。著書に『世間のカラクリ』(新潮文庫)、『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋』(宝島社新書)、『したたかでいい加減な生き物たち』(さくら舎)、『騙されない老後 権力に迎合しない不良老人のすすめ』(扶桑社)など多数。Twitter:@IkedaKiyohiko

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