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「5年間不登校の息子」を“東大進学”に導いた母の尽力「私も一緒になって悩んだ」

「高IQとかそういう言葉で、くくらないでほしい」と…

 冒頭でも紹介したように、難波さんの長男は現在、東京大学に通い、数学科に内定している。東大を目指す原体験をこんなふうに難波さんは推測している。 「もちろん、勉強――とりわけ数学に魅了されて、日本の最高峰で学びたいという思いがあったのは事実だと思います。ただ、彼が小2のとき、長女が彼を連れて東大のオープンキャンパスに行ったことがあったんです。そこで、長男は教授を相手に質問をして、面白がられたそうです。くわえて、『君が大学生になるころ、東大で会おうね』とも。きっとそういう体験が根源にはあるのではないか、と私は考えています」  息子の不登校という現実を受け止めるのは、容易ではない。綺麗事では済まない部分もあるだろう。この点について、難波さんは非常に重要な示唆を示す。 「私自身、『不登校でもいいじゃない』と思える人間だという自負がありました。でもどこかで、いろんな検査を受けさせて『IQが高いからじゃないか』と納得できる答えを探していたような気がします。それをはっきり自覚するのは、不登校の長男から言われた一言なんです。『僕を高IQとかそういう言葉で、くくらないでほしい』と言うんですね。これまでどこかで、息子をカテゴライズしていたし、世間に不登校を認めてもらいたくて免罪符を探していたんだと思います」 「社会の規格に合わなくてもいい」ーーそう優しく、物知り顔で言う人間がいる。だが当事者は誰しも悩みの鎖に繋がれ、孤独な檻のなかでもがく。難波さんが不登校を受け入れられたのは、学校に通うことではなく、長男の学ぶ意志を尊重することを照準に定めて決してブレなかったからだろう。親から子にしてあげられることは意外と多くない。手渡せる僅かなギフトのなかに、目的を見誤らない姿勢があったことは、長男の人生にとって何よりの福音だったに違いない。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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