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店舗数は5年で2倍…「おにぎり専門店ブーム」は淘汰フェーズに。喫茶店のコメダが参入も“強み”のボリューム感はいずこへ

“コメダの強み”では勝負していなかった

おむすび 米屋の太郎

手前から、天むす、鶏そぼろ、味噌ヒレカツむすび。3個で1040円。

私は老舗おにぎり専門店「ぼんご」をはじめ、様々なおにぎりを食べてきた上でまず感じたのは、思ったよりも小ぶりであることです。 コメダといえば、大盛りメニューや“逆写真詐欺”と呼ばれるほどのボリュームが強み。ところが今回の「おむすび 米屋の太郎」のおむすびには全くそれらが感じられず、コンビニおにぎりよりも小さいと感じるようなサイズ感だったのです。
おむすび 米屋の太郎

天むすはもともと小ぶりではあるものの、他のおにぎりにも専門店のようなボリューム感がない。

参考までにコンビニのおにぎりは、1個110~120gが基本。ぼんごスタイルのおにぎりのごはん量は、約180g。ここに具材がたっぷり入るので、1個200g以上にもなる特大おにぎりが専門店らしい特徴の一つに。しかも店内では握りたてほわっほわの状態で提供されるため、自宅やコンビニにはない特別な食体験を楽しむことができるのです。 具材がたくさん入っている「だし巻きいくら」(430円)の重量を計ってみたところ、141gでした。実際に、女性の私が名古屋おむすび3個を食べて満腹にはなりませんでした。おにぎりを頬張っておなかいっぱいになる幸せって、誰もが一度は経験したことはあるはず。でも、そういう気持ちにはならなかったというのが正直なところです。
おむすび 米屋の太郎

「だし巻きいくら」(430円)の重量は141g。コンビニと大差がありませんでした。

誤解や失礼のないように伝えたいのは、海苔やお米には確かなおいしさを感じたということ。基本的にはどの食材も秀逸なのですが、イートインがないためにむすびたてを実感しにくいのも残念なポイントかもしれません。 そして最後は、リピートするのに重要な要素となる価格については、3個で1040円払えるか賛否が生まれそうです。

“専門店”に期待されることとは?

おむすび 米屋の太郎

おむすび3個で1360円。専門店のおにぎりに満足するためには何が必要なのか?

おにぎり専門店が急増している理由は、ズバリ新規参入がしやすい点にあるでしょう。特別な調理器具やスペースは必要なく、熟練の技が試されるほどの複雑さもありません。また食の世界においては、どのようなジャンルや食べ物であっても、食べる人や選ぶ人の気持ちに寄り添い、おいしいイメージ作りや楽しい世界観を演出することは重要です。 しかしながら、そのような表面的な要素だけでは人の心をつかむことができなくなってきているのが、令和の時代。ましておにぎりは、最もシビアな食べ物かも。小さな頃からおにぎりを食べて育った人は多いはずですから、おにぎりを甘く見てはいけません。専門店に求められるのは、自宅やコンビニではなかなか得ることのできない非日常性や特別感。確かな技術によって握りたてを味わえるぬくもり感などが求められるのです。 おにぎりブームだから何でも売れる、安いから売れるというわけではありません。愛されるおにぎり店として勝ち抜いていくためには、ただならぬ工夫と情熱が必要でしょう。今後全国展開や海外を視野に入れている「おむすび 米屋の太郎」の動向に、引き続き注目していきたいと思います。 <TEXT/スギアカツキ>
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。世界中の健やかな食文化を追求。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。Twitterは@sugiakatsuki12
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