更新日:2025年03月17日 10:14
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出店ラッシュ続く”回転寿司チェーン大手3社”の中で、くら寿司だけが「回転レーン」を続けられるワケ

大手3社で唯一“回転レーン”で寿司を提供するくら寿司

くら寿司

J_News_photo – stock.adobe.com

24年10期の連結決算を見ると、国内11店舗、米国14店舗、アジア5店舗の計30店舗を新規出店。日本でも国内6店舗目となるグローバル旗艦店「銀座」を2024年4月にオープン。 インバウンド需要の取り込みにも力を入れている。 回転寿司では、衛生管理やいたずら防止などを理由に客席への専用レーンを導入している店が主流になっている。そういった中、従来の廻る回転レーンで寿司を提供しているのはくら寿司だけだ。
鮮度くん

抗菌寿司カバー「鮮度くん」 公式HPより

それを可能にするのは、抗菌寿司カバー「鮮度くん」があるからで、昔から衛生管理には定評がある。 鮮度くんの上部についているQRコードによる製造時間制限管理システムは、長時間レーン上に置かれた寿司を廃棄する仕組みになっており、鮮度の落ちた寿司が回ることを防いでいる。 また、いたずら防止にも力を入れており、本部から回転レーンを監視するなど、支援体制も構築されているようだ。 くら寿司は食の安全にこだわりを持ち、無添加米の使用、全ての食材から化学調味料、人工甘味料、合成着色料、人工保存料の四大添加物の除去を実現し、「安心・美味しい・安価」な食を提供することを理念としている。 飲食店だから当然とは言え、なかなかここまではできない店が多いのが実情だ。

今期売上の前年割れが続き、不安要素も抱える

国内の業績(24年度10月期決算)は好調さを維持しており、売上1743億円(前年比+6.2%)、経常利益66億円(前年比+375.5%)を計上した。海外分を含む連結では、売上2350億円(前年比+11.1%)、経常利益62億円(前年比+115,9%)である。 気になる点は今期(25年10月期)に入り、国内(既存店ベース)の業績を見ると、客単価は前年を上回っているが、客数と売上は24年11月から25年2月まで、4か月連続で前年を下回っており、今も解消されていない点だ。 株主優待を復活させて株価は上がったが、今後の成長性や将来性に問題はないか心配である。 調達面での特徴は、全国の漁港・漁協と連携を強化。各地域で水揚げされた地魚を使った鮮魚を各地域内の店舗にて「くらの逸品」としてメニュー化し販売すると共に、国産天然魚を丸ごと買い取る「一船買い」を実施している。 鮮度の高い魚を低コストで仕入れる環境を整備している点は強みだ。 その効果に原価管理技術の高さも加わり、原価率が40.7%と前年(43.6%)を-2.9%下回っている。 店舗は一皿110円~150円まで6段階の均一価格ごとに店舗を分類して適切な管理をしており、立地の需給バランスなどから最適な店舗の選定をしているようだ。

コスト上昇が続く回転寿司業界

米の高騰や水産資源の調達などで苦労する回転寿司は、1兆円市場(+海外出店分)と推計される成長市場だ。 今回取り上げた3社以外にも、かっぱ寿司や魚べいなど人気店も虎視眈々と上位を狙っており、市場が刺激的・競争的環境にある。 店を取り巻く経営環境は、米の価格が前年比9割高と値上がりし、魚介類系の原価高騰、人件費上昇、3月からの一層のエネルギーコスト上昇といった逆風が吹いた状態で厳しそうだ。 しかし、幅広い客層に支持される回転寿司の存在は外食市場には大きな存在となっており、今後も顧客提供価値への期待は大きい。 各店が競いながら独自性を発揮し、お値打ち感とお得感を提供されることを願いたい。 <文・中村清志>
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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