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日本国憲法によって日本の伝統は“リセット”された? 上念司氏が語る教科書に載らない戦後史

日本国憲法に対する右翼・左翼の考え方

国会議事堂 GHQは形式上日本国政府にアドバイスをする権限を持っていましたが、事実上はこの憲法草案に納得し、日本国憲法は生まれたのです。苦労して明治維新を成し遂げた先人たちの精神は受け継がれた。私はそう考えています。  しかし、右翼的な思想を持った人は、この日本国憲法によって日本は普通の国ではなくなってアメリカの属国になってしまったと言います。彼らが言うには、国の基本権である「交戦権」を放棄したことは、屈辱以外の何物でもなく、それを持たない日本はもはや国ではないのだそうです。  そして、左翼的な思想を持った人々も同様にこの憲法によって日本では革命が起きてすべてがリセットされたと主張します。8月のポツダム宣言受諾により日本には「実質的な」革命が起こったと彼らは言います。

「日本国憲法の制定によって伝統も歴史も断絶した」と主張するワケ

 なぜなら、戦前の「天皇主権(※)」から国民主権にシフトしたことで、「憲法制定権力が移行した」「憲法は国民が制定した」のだそうです。これが憲法学者の宮澤俊義により提唱されたいわゆる「8月革命説」というフィクションです。 (※ちなみに天皇主権というのは「君民共治」を言い換えた左翼用語です。実態をまったく反映していないレッテル貼りですが)  大変不思議なことですが、右翼も左翼も日本国憲法の制定によって伝統も歴史も断絶したと主張しているわけです。おかしいですね?  確かに天皇に関する規定にはいくつもの改編がありましたが、国民と天皇の関係(君民共治)には変化がありませんでした。  それなのに、なぜ伝統がリセットされたと言い張るのか? 革命好きな左翼がそう言いたいのは分かりますが、なぜ右翼までもがそのような妄言を言うのか? もうみなさんその理由はお分かりですよね?   答えは、右翼は設計主義というカテゴリーにおいて左翼と同じ思想系統に属するからです。彼らはリセットが簡単にできると思っているからこそ、変わってしまった日本を元に戻そう(復古主義)としているわけです。それもまた革命なのですが、事の重大性が理解できていないようです。
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日本を分断や崩壊の危機に晒した「敗戦革命」とは?
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1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

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