AIに監視される時代がすぐそこに…AI防犯システムの問題点と可能性
最近、にわかに注目を集めているのが「パブリックセーフティ」という言葉だ。AIやロボットなど最新テクノロジーで街の安全を守ろうという試みで、すでに海外では導入が進む。日本でも’20年の東京五輪を前に実証実験が始まっているが……
日本でも広がりつつあるパブリックセーフティを識者たちはどう見るか。ジャーナリストの斎藤貴男氏はこう警鐘を鳴らす。
「社会に監視網が行き渡れば、日本人は見張る側と見張られる側に分断されていくでしょう。防犯やテロ対策を謳いながら、政府はそれらの温床となる差別や格差の問題には目もくれない。それどころか監視によって社会階層を固定化しようとしている」
そもそも、パブリックセーフティの導入については、犯罪学者はもちろん、哲学者や社会学者も加わり、「人間社会とはどうあるべきか」という大前提が議論されなければならないと斎藤氏は説く。
「警察に犯罪を減らしたいという純粋な動機があることは否定しません。ただ導入が進めば、公安も使うし生活安全課も使う。思想の取り締まりに繋がるのは確実で、戦時体制を完成させることになる。権力に“神の目”を与えることは、断じて許されてはなりません」
一方、犯罪学者の小宮信夫氏は「日本の警察が犯罪予測にAIを採用する正しい方向」だとしつつも、状況が整っていないと言う。
「問題はAIに何を覚えさせるかです。日本ではまだ全然整理できていませんし、アルゴリズム化できるデータが揃っていません。仮に不審者の情報を入れるにしても、不審者の定義があまりに曖昧。子供に『おはよう』と声をかけただけで通報される現状では、不審者情報の利用は危険です」
小宮氏はさらに指摘する。
「日本では治安システムをつくる際、企業と警察だけで行い、犯罪学の研究成果を利用しようとしない。海外では、警察、企業、犯罪学者がチームになってシステムを運用しています。アルゴリズムを構築したり、副作用を抑えるには犯罪学の知見がどうしても必要」
人々の安心・安全を守る盾となるか、人々を縛りつける縄となるか運用する人間次第だ。
【小宮信夫】
’56年、東京都生まれ。犯罪学者。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。法務省などを経て、立正大学文学部社会学科教授。
【斎藤貴男】
’58年、東京都生まれ。ジャーナリスト。英バーミンガム大学大学院修了後、『日本工業新聞』、『週刊文春』記者などを経てフリーに
取材・文/池松信二 千吉良美樹
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