R-30

世界に通じる「おやじ的経営」、立川に凄い社長がいた!

 中小企業=待遇が悪い、経営が不安定……といったイメージを抱く人は少なくないだろう。しかし、雇用のエキスパート・海老原嗣生氏が「日本に約200万社あるといわれる企業の9割以上が従業員300人以下の中小企業なんです。しかも、中小のなかには他社には真似できない技術力や世界シェアを持っている企業も多く、大手より体力もあって、給与水準もまったく引けをとらない会社はたくさんあります」と語るように、盤石な中小企業は多く存在する。中小の魅力はほかにも、「若いうちから責任のある職務を任されるチャンスがある」「家族的経営で雰囲気がよく、辞める人が少ない」「残業がなく、ワークラフバランスを重視できる」などさまざま。

 そこで週刊SPA!9月20・27日合併号の特集「[スゴい中小企業]への転職ガイド」で取材したなかで、株式会社メトロールhttp://www.metrol.co.jp/)のユニークな社長を紹介したい。東京都立川市にあるこの会社は、76年に松橋章氏(現在は会長)により創業された。世界最小・高精度の「スイッチ」で世界シェア7割を誇る。取材日当日は、新社屋に引っ越したばかりで慌ただしいなか、笑顔で出迎えてくれた松橋卓司社長。近年は、中国やインドなど海外進出にも積極的で、海外向けの直販サイトを開設しているほか、海外からの外国人社員の受け入れもしている。

日本のおやじ的経営は世界に通じる」と語る松橋社長。その思いを裏付けるエピソードが。日経CNBC『ジャパンレポート』という番組で、“外国人の登用に積極的な企業”をテーマに、ユニクロ、楽天、そしてメトロールで働く外国人従業員がクローズアップされた。ところが放送直前に、東日本大震災がおき、番組制作サイドから「震災後の外国人従業員を改めて取材したい」と申し出があり、できあがった番組を見ると……多くの外国人従業員が帰国するなか、メトロールの社員はずっと日本に残っていた。

「仕事の後、毎日彼らを誘っては飲みに行ってましたからね(笑)。絆も生まれますよ」


⇒日経CNBC『株式会社メトロール』
(http://www.youtube.com/watch?v=0Q1rXtjAHtQ)


 同社では、3か月に1度、社内飲み会をしたり、全額会社負担・出勤扱いの社員旅行などのイベントももうけている。

 他社が真似できない技術で世界トップを誇るメトロール、より大きくしようという思いは?

ありません(笑)。“大きく”よりは“強く”ありたい。大手がオーケストラだとしたら、中小企業というのは、ジャズのセッションみたいなもの。製品の研究から開発、製造、販売まですべてを自分たちでできる自由度とフットワークが強みなんです。そのためには、社員の顔が見える規模くらいがちょうどいい

 取材後、外は土砂降りの雨に。すると松橋社長は「乗ってって」と、自らクルマで駅まで送ってくれた。帰りの電車内、「こんな会社なら働いてみたい」と納得する記者と編集だった。

展示会でポーズをとる松橋卓司社長。お茶目である


取材・文/安田はつね(本誌)

『就職、絶望期 ~「若者はかわいそう」論の失敗』

安易な雇用論と税金バラ撒きの末、氷河期より深刻な事態が進行中




おすすめ記事