北陸新幹線ルート変更で「トンボの楽園」がなくなる
―[トンボの楽園]―
3月14日に金沢までが開通する北陸新幹線。敦賀までの延伸は前倒しで’23年春ごろと発表された。地元は歓迎ムードだが、その計画ルートが世界的に貴重な湿地を分断してしまうという問題が発覚した!
◆絶滅危惧種を含む生物種3000以上が生息する“奇跡の湿地”が危ない
1月14日、北陸新幹線の敦賀延伸は計画が3年前倒しとなり、’23年春ごろ開業ということが発表された。ところが、この計画ルートが、世界的にも貴重な湿地を分断するとして問題になっている。
福井県敦賀市の東方に広がる中池見湿地は、三方を山に囲まれた約25 haの小さな湿地(標高約47m)。環境省のレッドデータ種60種を含む生物種3000以上、本州で確認されているトンボのうち6割以上にあたる72種が確認され、「トンボの楽園」としても知られている。春にはサワオグルマの黄色い花が一面に咲き、ツキノワグマやニホンカモシカの生息地ともなっている。世界的な希少種のノジコなど渡り鳥の重要な中継地にもなっていて、’12年7月にラムサール条約に登録された。
その直後の’12年8月、北陸新幹線(金沢・敦賀間)の計画路線が新たに公表された。当初計画されていた旧ルートよりも、国交大臣の認可を受けた新ルートは、さらに中池見湿地の内側を通ることになったのだ。現地で湿地保全活動やエコツアーなどを行っている環境NPO「中池見ねっと」の上野山雅子氏はこう語る。
「旧ルートと新ルートの差は、最大で約150m。事業者にとってはわずかな変更かもしれませんが、湿地に対してのダメージは相当深刻です。新ルートは湿地の唯一の水の出口である狭い谷『うしろ谷』を貫通します。この谷には、湿地の中でもここにしかいない動植物が多く、新ルートはこの谷を破壊し、トンネルで分断します」
⇒【画像】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=805449
![[トンボの楽園]を北陸新幹線が破壊する!](/wp-content/uploads/2015/02/tn011-550x320.jpg)
’96年公表の計画路線は、「うしろ谷」の外側を通過するものだった(旧ルート)が、’12年に公表された計画路線(新ルート)は、100~150mほど湿地の内側に入り込み「うしろ谷」を貫通、周辺の山々に大きくかかるルートに
- ノジコ…IUCNレッドリスト絶滅危惧II類。日本でのみ繁殖が確認され、中池見湿地は重要な中継地(写真/田川亨)
- ヘイケボタル…水田や湿地などの止水域に生息。農薬や水田周辺の環境変化の影響で激減中(写真/大場信義)
- ミズトラノオ…環境省の絶滅危惧II類。「虎の尾」のような、淡い紫色をした花が夏に開花する(写真/日本自然保護協会)
―[トンボの楽園]―
【関連キーワードから記事を探す】
前川喜平・前文科事務次官が証言「加計学園獣医学部新設は、素人が説明・評価して進められた」
奄美大島の“ジュラシック・パーク”が破壊の危機
加計学園に市税96億円投入…でも潤うのは地元今治市ではなく岡山の業者
小池知事も推進する「スーパー堤防」に疑問…200年と2.7兆円をかけ、江戸川区だけで9万人立ち退き
小池都知事が大いに期待する「外環道」、反対住民のアンケートも署名も無視!?
完成確率は20%? 陥没事故発生で遠のく外環道完成
関電幹部が「原発マネー」3億円をもらって、“被害者ヅラ”する裏側
「名護市長選の自民候補勝利の裏に公共事業バラマキが…」古賀茂明氏
前川喜平・前文科事務次官が証言「加計学園獣医学部新設は、素人が説明・評価して進められた」
石破茂氏の発言で懸念広がる加計学園の「バイオハザード問題」
北陸新幹線「金沢-敦賀」が延伸開業。“新規で開通した6駅”全部降りてみた
北陸新幹線の開業から約2年。心配された上越新幹線沿線経済への影響は?【2014年問題のその後】
男女300人に聞いた「あなたの今年の漢字は?」 第1位は「苦」
北陸新幹線開通の金沢市に日本中から迷惑客が集結!?
【鉄道旅で使えるスマホ技】車内撮影にこだわるには?