格闘家・川尻達也の挑戦――37歳、3度目の網膜剥離手術からの復活
網膜剥離のため戦線離脱していた総合格闘家の川尻達也選手(T-BLOOD所属)。
ついに、6月20日(ドイツ現地時間)の『UFC Fight Night 69』で、デニス・シヴァーを相手に復帰することが決まった。
日本総合格闘技界の全盛期に、修斗、PRIDE武士道、DREAMと強者が集う舞台で活躍し、現在は世界最高峰とされるUFCのオクタゴンに上がる川尻選手。
しかし、そんな彼ももう37歳。歴戦による負傷で網膜剥離は3回も手術をした。後進の若手も台頭する中、再びオクタゴンに向かう彼の心境を聞いた。
◆「終わったな」とか思ってるヤツを見返してやりたい
「戦線離脱している間も、早くオクタゴンに上がりたいという思いが強かった。なにしろ、僕ももう37歳。目のほうも3回めの手術でしょう。回りは直接言わないけど、『さすがに厳しいだろう』とか『終わったな』とか考えているんだろうなと。僕だって逆の立場ならそう思いますよ。でもね、だからこそ僕は、そんな風に思っている人たちを見返してやるって気持ちでモチベーションを強く持てたんだと思うんです。それにそんな中でも、まだまだTwitterとかで『期待しています』と言ってくれる人もいる。それももちろんモチベーションになりました。ただね、僕はまだ格闘技界で何も成し得てないんですよ。
一時代を築いた人なら、もう頂点を経験しているからモチベーションを上げづらいとかもあるのかもしれないけど、僕はまだ何もできてない。だからモチベーションは下がることはなかったです」
休んでいる間も、日本人選手でも堀口恭司選手が世界タイトルに挑戦するなど、若手が台頭しつつある。そんな中で、若いとはいえない37歳で、しかも完全なアウェイであるドイツ・ベルリンでランカー相手の試合。不安はなかったのだろうか?
「ね。どんだけアウェイだって感じですよね(笑)。ただ、相手はランカーなんですよ。12位とかなんでね。”噛ませ犬”みたいに思われてるのかもしれないけど、僕にとってはチャンスだって、まだまだいいチャンスをくれるんだって思ってるんです。
やっぱりね、UFCはアメリカの団体なんで、こっちが中心にはならないのはわかっている。だから、そこで上り詰めるのはアウェイだろうと試合して成績を残すことも必要なんです。もちろん、日本にいたら僕も日本人中心で格闘家としてはそれなりの地位もあるので、自分の思い通りになることも多いんですが、海外で戦うとなるとそういうのもまったく通用しないんで。
逆に、37歳でもそういうチャレンジしないといけない状況にいられることや、経験を積めることってありがたいと思っているんです。
まああと、相手のデニス・シヴァーも36歳なんで(笑)」
◆37歳だけど、今が一番フィジカルが調子いい
インタビューは試合の2週間ほど前。川尻選手はコンディションをこれまでにないほど調子がいいという。
「若い頃って、ガムシャラにやるだけでしょう。でも、年齢を重ねると身体のケアの仕方もわかってくるし、減量やトレーニングの知識も増える。練習量が減ったというより、密度が高い練習ができている感じです。
今までは減量期は朝起きて1時間走って練習後にエアロバイク30分漕いで夜も1時間半走ってという感じで、長時間の有酸素で体重を落としていたんです。でもそれだと筋肉も落ちてしまう。今回は減量のときは、短時間で強い負荷をかける『タバタトレーニング』とかいわゆるHIIT(高強度インターバルトレーニング)を取り入れたところ、筋肉の落ちが少なくて、バネも感じるんですよ。
よくキャリアを重ねた選手は老獪なテクニックでとかいうけど、僕の場合はフィジカルも今が一番調子いいと思います」
川尻選手出場の『UFC Fight Night 69』はUFCのネット放送やアプリなどで視聴可能なので、見られる人はぜひ応援して欲しい。
そして、川尻選手が取り入れて、筋肉を温存させながら減量を成し得た原動力となった、たったの4分間で運動能力を飛躍的に向上させる「タバタトレーニング」に関する初の解説書『究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング』は7月上旬、全国書店で発売予定なので、そちらもチェックして頂きたい。
<取材・文/日刊SPA!取材班>
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