『007』最新作に登場する元WWEスーパースターとは誰だ!?
―[フミ斎藤のプロレス講座]―
ジェームズ・ボンド・ムービーの最新作『007スペクター』(サム・メンデス監督)で、元WWEスーパースターのバティースタが大暴れしている。
キャストのクレジットでは、バティースタではなくて、デイヴ・バウティスタDave Bautistaという本名が使われている。バティースタはWWEのキャラクター=リングネームだったから、映画俳優としてはデイヴ・バウティスタという名前のほうがメジャーになっていくのだろう。ちょうど、ザ・ロックよりもドウェイン・ジョンソンのほうがポピュラーになった現象と同じだ。
『007スペクター』のメディア配布用資料のキャストのページには、バティースタ――このコラムは“プロレス講座”なので、あえてバティースタと記す――がこんなふうに紹介されている。
「1969年1月18日アメリカ ワシントン生まれ。プロレスラー・総合格闘家としてのバウティスタは、WWEで6度の世界チャンピオンに輝き、国際スポークスマンとして活躍した。俳優業に専念するため、2010年に引退。マーベル・スタジオの映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)にドラックス役で出演。2017年公開予定の続編にも出演予定である」
「最近ではリュック・ベンソンらがプロデューサーを務める『Warrior’s Gate』(2015)にも出演。これまでの作品には『リディック:ギャラクシー・バトル』(2013)、TVシリーズでは『ヤング・スーパーマン』(2006)、『CHUCK/チャック』(2010)などがある」
バティースタが演じる“ヒンクス”は、この映画のなかでローマ、大雪のオーストリア、サハラ砂漠に向かう列車内と合計3回、ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)と対決している。
ボンドが運転するアストロマーティンDB10とヒンクスが運転するジャガーC‐X75が夜のローマを疾走するカーチェイスのシーンでは、2台の自動車が猛スピードで並行して走りながら、ウィンドーごしにヒンクスがボンドに不気味にほほ笑みかける場面がある。
“殺し屋”が主人公に向かって無言でニヤリと笑うシーンでは『ブラック・レイン』での松田優作の――バイクを走らせながらの――“ニヤリ”があまりにも有名だが、バティースタの“ニヤリ”もかなりダークなテイストを出している。
オーストリアの雪山では、ボンドが操縦するセスナ機とヒンクスとその仲間たちが運転する黒の4DW車による空と山道の追跡シーンがあるが、ここではヒンクスが乗った4WD車が大炎上。ヒンクスは死んだかと思われたが、場面が変わる直前、倒れたヒンクスの指先がピクピクッと動くことで、映画を観ているオーディエンスは「あ、まだ死んでない」と察知するというわかりやすい演出になっている。
走る列車内での決闘シーンでは、ボンドは――ヒロインのマドレーヌとの晩餐のため――白のタキシード姿、ヒンクスはダークグレーのスーツ姿で車両から車両を移動しながら殴り合いを演じる。ボンド映画のアクション・シーンでは、ボンドがスーツを着用していることが“鉄則”とされているというが、いきなり食堂車に現れるヒンクスも――セオリーどおり――ちゃんとスーツを着ている。ヒンクス=バティースタは、体が大きくで、顔もコワくて、とにかく殴っても殴っても倒れない。
ボンドがどうやって不死身の悪役ヒンクスをやっつけるかは、映画を観てのお楽しみ。バティースタがスクリーンに映っている時間がかなり長いが、セリフらしいセリフは、いちばん最後に叫ぶ「クソッ」というひと言だけだった。
ジェームス・ボンドと殴り合いを演じたプロレスラーとしては、シリーズ第3作『007ゴールドフィンガー』(1964)でショーン・コネリーの初代ボンドと闘ったオッド・ジョブ役の日系レスラー、ハロルド坂田が有名だ。バティースタも、ボンドと素手による殴り合いの決闘シーンを演じたことで、「007に出ていたあの人」として世界じゅうの映画ファンに記憶されることになるのだろう。

斎藤文彦
―[フミ斎藤のプロレス講座]―
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