肩書の多すぎる女「鈴木涼美」とは一体何者なのか? 慶應、東大、AV女優、日経記者、作家…
肩書を多数持つ生き方を「スラッシャー」と呼び、一つの職業、価値観にとらわれない生き方が注目される昨今だが、彼女ほど肩書の総合点に破壊力がある女性も珍しい。その名は鈴木涼美。舞踏評論家・翻訳家の父と、児童文学者の母の間に生まれた彼女は、現在は雑誌やテレビにコメント出演しつつ、文筆業を中心に活動している。
修士論文をもとに書籍化した『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)が「紀伊國屋じんぶん大賞 読者と選ぶ人文書ベスト30」に選ばれ注目を集めたのが’13年。その後に刊行したエッセイ集では、前著とは打って変わった口語調の軽妙な語り口が共感を呼ぶ。最新刊ではJC時代から現在に至るまでに出会ったおじさんたちの奇行と思い出を綴った『おじさんメモリアル』(扶桑社)も好評発売中だ。
本人いわく「原稿が忙しいときは家にこもりきりで、週に1回くらいしか化粧しない。至って地味な毎日」だそうだが、現在に至るまでの経歴を辿ると、慶應義塾大学環境情報学部在学中にAVデビュー。その後東京大学大学院に進学し、修士課程修了後は日本経済新聞社で記者として5年半勤務。退社後に「日経記者はAV女優だった!」と文春砲の洗礼を受けるというなかなかの波瀾万丈ぶりだ。
「シャネルやヴィトンみたいなわかりやすいブランド品が好きなんです。それと同じ感覚で、慶應、東大、AV、日経……いろんなブランドのタグを集めてたらいつの間にかこうなっていました」と笑う彼女の素顔に迫った。
休日は観光客で賑わう鎌倉駅からタクシーで10分。黒川紀章が設計した瀟洒な洋館が彼女の実家だ。幼少期からの写真やアルバムなどを掘り返しつつ、話を聞いた。
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「小さい頃の夢は作家かフィギュアスケーター。伊藤みどりブームだったからかな。でもフィギュアスケートは一度もやったことありません(笑)。基本、ミーハーなんです」
中学生のときは『MYOJO』と『ポポロ』の切り抜きが生きがい。「安室奈美恵になることしか考えていなくて一気にギャル化した」というが、小学校から通っていた名門校・清泉では茶髪、パーマはもちろん禁止。「『何をしても何を着ても寄り道してもいいけど、悪いことをするならいいこととセットでしなきゃダメ』という母の教えに従って、ルーズソックスをはくために必死に勉強して学年一番の成績をキープしていました」。だが、「このまま清泉にいたら、女子高生が主役のキラキラした’90年代を、第一線で楽しめない!」という理由で、高校は「学校帰りに渋谷で遊べる共学」である明治学院高校に進学した。
「高校時代はブルセラブームの末期くらい。パンツを売ったりしながらノーマルなギャル生活を満喫しました。高3までほとんど勉強はしていなかったけど、今後いろいろしでかすであろう悪事を帳消しにするには、早慶くらいは行っておいたほうがいいかな、と思い、高3の夏からは必死に勉強して大学はSFCに行きました」
入学直後はサークル活動をしたり、パチンコ屋でバイトをしたりしていたが、横浜で一人暮らしを始めたのをきっかけにキャバクラで働き始め、その後知り合いのスカウトの紹介でAVデビューする。
「AVデビューは、きっかけというほどのものは全然なくて。キャバ嬢も慣れてきたし、もうちょっと面白いことがないかなーと思っているときにスカウトされたんです。知り合いのホストの彼女がAV女優だったんですけど、その人がすごくきれいな人だったので、AV女優もいいかもと思ったとか、そんな感じです」
いいことと悪いことはセットという母の教え
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