連載書籍化のため、デリヘルを5回呼んだ結果――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第49回>
―[おっさんは二度死ぬ]―
昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート!
【第49話】デリヘルにいってみた
この連載が掲載される頃にはもう発売されているはずだ。それどころか一部の熱心な方は既に入手してくれているかもしれない。そう、6月末、ついにこの「おっさんは二度死ぬ」が書籍化されたのだ。
ついに書籍化である。
来る日も来る日もこの連載を火曜日に更新し続けた甲斐があったというものだ。今年の1月1日は火曜日だったが、さすがにその日くらいは休みをくれるだろうと踏んでいたら、普通に書かされて更新されたので、まあ鬼の所業と言うほかない。まさしく盆も正月もなく火曜日に更新し続けたのだ。
さて、無事に書籍化された「おっさんは二度死ぬ」であるが、自分で書いておいてアレだが、「書籍化・6月末発売」の報を聞いたとき、「扶桑社狂ったな」と思うしかなかった。まさかこれを本にする出版社があるとは思わなかったからだ。
基本的に連載の書籍化の多くは、連載作の中からいくつかを選りすぐって、加筆修正し掲載、何本かの書下ろしを加えて完成、となることが多いと思う。巻末には裏話もついていたりしてちょっとお得に感じる構成だ。
けれども、トチ狂った僕はなぜか構成から変えてイチから作り始めた。どれくらい構成が違うかというと、この数字を引用すると分かりやすい。
この「おっさんは二度死ぬ」連載は、1話を4000文字前後の文字数になるようにして構成している。そして、書籍の場合、スタイルによって前後するが、だいたい8万文字から10万文字の文字数が一般的だ。そうなると単純計算で連載掲載作が20本から25本必要になってくる。
それなのに書籍版「おっさんは二度死ぬ」には実に6本のエピソードしか掲載されていない。頭おかしい。狂ってる。
正確に言うと他の要素もいくつかあるが、それでもやはり連載作からは逸脱したスタイルと言わざるを得ない。
最初にこの書籍化の原稿を送ったときは、ボツにされると思っていた。あまりに逸脱しているからだ。そして、普段のやつから掲載して書き下ろしを加えるオーソドックスなスタイルを提案されると思っていたのだ。それが連載書籍化のあるべき姿だろうし、仕方のないことだと思った。
そうなったらこっちのほうは闇営業ならぬ闇出版してやろうと目論んでいたほどだ。
いよいよボツになると覚悟した時、扶桑社から来た連絡は「このスタイルで書籍化決定、6月末発売」であった。完全に扶桑社狂ったな、と思うしかない状況だ。たぶん何人か狂ったやつが編集部にいる。
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri)
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『pato「おっさんは二度死ぬ」』 “全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"―― |
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