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連載書籍化のため、デリヘルを5回呼んだ結果――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第49回>

ボツになるかもしれない書籍のために、わざわざデリヘルを5回呼んだ僕

 さて、そんな狂った果実である書籍版「おっさんは二度死ぬ」であるが、大枠の構成はラブホテルの一室でおっさんが語るおっさんの話を聞くデリヘル勤務者“カエデ”の物語だ。この時点ですでに大きくネット版からは逸脱している。なんなんだ、これは。  まあ、この話の大筋は、是非ともお近くの書店で購入して読んでいただきたいところだ。それも2回読んでもらえば多くの気づきが得られるように作っているつもりだ。  そこで大きな問題となったのが舞台となる“デリヘル”だ。ストーリーを紡ぎ出す過程において、どうしても“デリヘル”を詳細に描写しなければならない状況がやってきたのだ。適当な描写をしてリアリティが薄れても困る。おまけにラブホテルにもあまり詳しくない。僕が考え出した結論は、取材に行こう、ということだった。  ということで、今回、本当に書籍版「おっさんは二度死ぬ」のためだけに5回ほどデリヘルを呼んでみたのだ。  来てくれた女のコたちは、面白がって色々なことを教えてくれた。  働き方のこと、どうしてこの店を選んだのか、どういう客がいるか、どういうシステムで回っているのか、この世界でのルール、どれくらい稼げるのか、困っていること、悩み、なんでも教えてくれた。そして彼女たちは彼女たちが語る言葉にいくらかの嘘を混ぜることも教えてくれた。  彼女たちの話は実りの多いものだった。この書籍を構成するうえで、彼女たち4人の虚実入り混じった話は大きな糧となっている。そう、4人だ。5回呼んで、4人の彼女たちの話が参考になっているのである。つまり、残りの1人はあまり参考にならなかったということだ。  そう、とんでもないのが来たのだ。  こういった取材においても、やはり評判のいいコなどから話が聞きたいため、事前にかなりの情報収集を行った。具体的には、そういったデリヘル店舗の情報が絶え間なく飛び交っている掲示板などを熟読し、評判の良さそうな、ノリの良さそうなコを厳選したのである。  その厳選手法はなかなかのものだったらしく、4人までは本当にノリが良くて親切で、完全に狙い通りだった。しかしながら、そこでふと思ったのだ。 「もっと多角的な情報を得るべきではないか?」  そう、つまり、評判のいいコばかりでなく、評判悪いコの話を聞くべきではないかと思ったのだ。早速、闇掲示板の情報を収集する。  こういった闇掲示板は、大半の掲示板ユーザーは気に入っているコの情報を隠すため、優良なコの情報が少ない。逆に、悪口や悪評は狂ったように書き込まれているため、評判の悪いコを探すことは簡単だった。その中でも特にヤバいとの書き込みが多いコを狙って呼んでみたのである。
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掲示板の噂は本当だった
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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