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純利1兆円超え。トヨタはなぜ復活できたのか?“EV出遅れ”を挽回する5つのシナリオ

「新型プリウスの予約待ち、1年以上だって!」 「レクサスのRXなんて予約すらさせてもらえないよ…」  クルマ好きの中からそんな声がある中、トヨタの大復活が見えてきたのをご存知でしょうか。  つい最近までコロナ禍や電気自動車(EV)普及の遅れなどで危機が叫ばれていた同社。しかし、ここに来て完全なる復調、あの「世界のトヨタ」がいつもの調子に戻ったのです。  なぜトヨタは復活できたのか、決算資料から読み解きます。 TOYOTA

直近の決算では日本初の快挙も達成

 トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は8月1日に最新となる4〜6月期の連結決算を公開しました。結論から入ると、主要なすべての項目は右肩上がり、特に売上高、営業利益、純利益いずれも過去最高を更新しています。その中でも第一に注目したいのが営業利益です。  営業利益は前年同期から94パーセント増の1兆3113億円。実は日本企業において四半期の純利益が1兆円を超えるのは初のことです。  トヨタが1兆円超えを達成できた要因には円安による為替変動がプラスに働いたこともあります。  為替変動によって1150億円の増益をしており、業績を後押ししました。しかし、最大の要因は別にあります。純粋に業績自体が好調なのです。生産性の向上に力を入れてきたことが実を結び、販売台数は前年同期から115.5パーセントとなる232万6000台と大きく数字を伸ばしました。

車両価格の値上げが奏功

 さらに価格の改定も見逃すことのできない要素です。  特に海外においては値上げによって一台ごとで生じる利益も大きく増えています。販売台数を伸ばし、一台ごとの純粋な利益も増加しているという二つのプラスを生んだ営業面の努力によって約6000億円の増益に成功しました。  また、これまでトヨタ不調を論じる際の大きな材料となっていたPBRも回復しています。PBRとは株価純資産倍率を示す数値です。1倍を割り込むと事業を継続するよりも解散した方がよい状態だと評価されます。  トヨタでは昨年末ころから1倍を割り込む期間が続いていましたが、6月以降は安定して1倍以上の数値で推移しています。  つまり、投資家の視点から見ても今のトヨタは”買い”であると判断され、市場での評価も高まってきているということです。
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復活の鍵を握る電気自動車開発
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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