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日本人の多くが知らない「偉大な天皇」とは/倉山満

岸田首相「女系天皇以外の方法で検討」

日本の皇居の二重橋9月27日の産経新聞のインタビューで、自民党の萩生田光一政調会長が、皇位継承問題で自らが責任者となって議論を進めると答えた。 菅義偉内閣における有識者会議において、長年の懸案であった「旧皇族の男系男子孫の皇籍取得」を軸とした提言がなされ、岸田文雄首相が報告書を両院議長に提出した。これを各党が持ち帰り意見書を提出することになっているが、今のところ意見書を提出しているのは、日本維新の会だけだ。野党より問題は、与党の自民党である。党内議論が進んでいないので、岸田首相が萩生田政調会長に促した形だ。歓迎する。既に岸田首相は「女系天皇容認以外の方法を模索する」と明言しているので、あとは具体化だけだ。 皇位継承問題は日本の政治において、重要さは別格だ。与野党の静謐な環境で進められることを祈念する。

日本人の多くが知らない偉大な天皇

さて、このたび『嘘だらけの日本古代史』を上梓する運びとなった。私の専門は近現代史ではあるが、皇室史学者でもある。近現代以外の皇室についても一通りの知識は持ち合わせねばならない。そして、現代の皇位継承問題を論じる際に、古代史の正確な知識が無く、議論が歪められる場面に何度も遭遇した。そこで、「私だって知っている」レベルの古代史の常識をまとめた。と言っても、神話から平安時代のすべてを新書一冊にまとめるには、どうしても割愛せねばならない部分も多々あった。その部分を、今回からいくつか紹介する。 先例破りが横行した奈良時代を経て、史上最後の独裁的な天皇として、桓武天皇が登場した。第50代天皇で、東北地方平定と平安京造営で知られる。翻って、第52代嵯峨天皇の事績を知る人は少ない。勝るとも劣らない偉大な天皇であるのに。空海・橘逸勢とともに三筆と呼ばれた、「お習字の上手い人」と学校で習うくらいか。嘆かわしい。嵯峨天皇こそ世界史最高の君主と評価して、過言ではないのに。 嵯峨帝は、延暦5(786)年、桓武帝の第二皇子として生まれる。幼き頃から聡明で知られ、12歳年上の兄、平城天皇の皇太弟に立てられる。病弱な兄に代わり、大同4(809)年に即位した。 治世の最初に行ったのが、観察使の改編で、この役職の格を下げた。つまり給料(財源は税である)を減らしたので、実質的な減税となった。既得権益に切り込んだので、不満層は兄の平城上皇の周りに集まる。
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千年以上前に死刑を廃止した嵯峨天皇
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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