更新日:2015年06月18日 16:39
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毛虫の大量発生。JRに農家や自治体も…全国的に困惑中

毛虫が全国的に「異常発生」して、森林や農作物に被害が出ているという。「温暖化の影響では」「天変地異の前触れではないか」とも言われているが、その原因は何なのか? 対策方法はあるのだろうか? ◆突然の毛虫大発生に全国の自治体が困惑中!?  5月3日、JR四国の高徳線讃岐相生駅~阿波大宮駅間のレール上に毛虫が大量発生。列車の車輪が踏みつぶした毛虫の体液で空転、立ち往生して運休するという事態になった。
毛虫

写真/阿寒ネイチャーセンター

 毛虫の種類や発生量については「調査していないのでわからない」(JR四国広報室)とのことだが、「毛虫で運休というのは、これまでに経験がない」という。  ここ2~3年、全国的に大発生しているのが「マイマイガ」の幼虫(毛虫)だ。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=868972  秋田県南部では今年もマイマイガの幼虫が大発生。目撃数は「異常繁殖」と言われた昨年を上回る。秋田県横手市の農家、Aさんはこう語る。 「毛虫が家の壁や木の幹にびっしりはりついていました。このままでは木の葉が食い尽くされ、農作物にも影響が出る心配がある。殺虫剤を撒いて駆除すると一定の効果があるものの、またどこからか集まってきてしまいます。行政には一斉駆除してほしいと言っているのですが、予算などの問題から、個人でやってくださいと言われてしまいます……」  長野県病害虫防除所は5月1日、マイマイガの幼虫が多く発生し、果樹や野菜など農作物の食害が増える可能性があるとして、県全域に注意報を出した。数年前からマイマイガの大発生に悩まされてきた長野市では、今年の4~5月、7年に一度の善光寺御開帳の時期に、この毛虫の大発生が懸念されていた。  そこで市では住民に協力を請い、昨年の9月からマイマイガの卵塊の駆除を積極的に行ってきた。 「成虫は飛んで逃げてしまうので、駆除するのが困難です。卵塊や幼虫の時期から対策を行う必要があります。その結果、善光寺の中央通りではほとんど毛虫が見られず、茶臼山公園などでも去年の10分の1ほどに減ったそうです。おかげさまで“毛虫だらけの御開帳”になる危機は回避できました」(長野市環境政策課) <マイマイガをめぐる動き> ●秋田県 県南でマイマイガの幼虫が大発生、幼虫の目撃数は成虫が異常繁殖した昨年を上回り、さらに被害は拡大するとの予測だが、対策は遅れている。樹木だけでなく、電柱や建物の壁にも卵が産みつけられていたとの報告も。農作物への被害も懸念され、早期の防除が求められている。幼虫の状態でいる、6月いっぱいが駆除の勝負どころだという ●新潟県 昨年、魚沼市、南魚沼市、上越市、妙高市など、県内各地の山間部でマイマイガが大発生。幼虫は樹木の葉を食い尽くし、近隣の農耕地にも被害が及んだ。成虫の大群が街灯に集まるため、街灯を消す商店街や店舗も現れた。各自治体では今年も住民に駆除への協力を呼びかけるとともに、薬剤散布機器の貸し出しや薬剤購入費の助成などを行っている 【マイマイガ】 ドクガ科に分類される蛾の一種。北アフリカ、ヨーロッパ、アジア、北米に広く分布し、森林害虫として知られている。9月~翌年3月頃まで樹木などに卵塊が産み落とされ、越冬。4月頃から屋外で孵化し、幼虫(毛虫)に成長する。幼虫は背中に黄色・オレンジ色の斑紋があり、大きくなると頭もオレンジ色になり、黒い八の字の斑紋が現れる。幼虫から成虫に羽化するまでの約2か月間にさまざまな樹木の葉などを食べて成長し、その後蛹となる。7月頃に羽化して成虫となり、産卵する。雄は昼間活発に飛び回り、くるくる回っているように見えることから「舞々蛾(まいまいが)」と呼ばれている。成虫の寿命は6~10日間程度。 取材・文/北村土龍
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