生活保護を積極的に利用するほうが、社会の「経済的利益」になる
生活保護を積極的に利用するほうが、社会の「経済的利益」になる
ほっとポットには、失職し家を失い、行き場をなくした人が年間800人近く訪れます。従来の福祉は、現在のような状況を想定していないため、至る所が穴だらけ。その穴を埋めるため、私たちのようなNPOや民間団体が働いています。
その活動をしていて特に問題だと思うのが、生活保護を当然支給されるケースでも、経費を削減したい行政が理不尽に断るケースが多々あるということです。
しかし実際には、生活保護制度など行政の支援制度を積極的に利用するほうが、社会の経済的利益に繋がるという考え方もあるのです。
貧困状態にある人々に対する支援策がほとんど用意されていない場合、未然に防げるはずの犯罪が増えてしまいます。終わりの見えない貧困により、生活苦の末の窃盗や万引というものが多発するようになるのです。軽犯罪とはいえ、何度も繰り返していると累犯となってしまい、刑務所に送られてしまいます。
刑務所に入って支援を受けると、1人当たり何百万円というお金がかかってしまいます。こうして刑期を終えて出所したところで、行くあてもなく所持金も僅か。生きていくためには、結局また同じような犯罪を繰り返すしかない。
このような受刑者に本当に必要なのは、懲役刑のような刑罰ではなく、自立を助ける福祉なのです。
そういったことも踏まえて、生活が苦しくなってきたら早期に生活保護制度を利用する。それをもとに生活環境を整え、職業訓練を受けて自立してもらいます。そうすることで、彼らが将来にわたって納税者となることも期待できるようになります。
生活保護制度や、生活立て直しのための貸付金制度など、利用できる制度をどんどん積極的に利用してもらい、早期に自立してもらうことが、結果として経済的にも我々の社会の利益になるのです。
【藤田孝典氏】
ホームレス支援NPO「ほっとポット」代表理事。編著書に『反貧困のソーシャルワーク実践』(明石書店)など
― 20~30代ホームレスが落ちた[貧困アリ地獄] 【5】 ―
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