大規模な差別反対デモ「東京大行進」とは? 実行委員を直撃した
日刊SPA!でも取り上げてきたように、ここ最近東京の新大久保や大阪の鶴橋など在日韓国人が多い繁華街で「朝鮮人を殺せ!」「出てけ」などとコールするデモが開かれている(https://nikkan-spa.jp/414354)。
そうしたヘイトスピーチに対して、「NO」の声を上げる日本人も少なくなかったが、今まではヘイトデモに対する「カウンター」として、デモを阻止するように動くことが中心だった。
しかし、9月22日(日曜日)ついに、多様なひとびとの共生を積極的に肯定し、ヘイトスピーチに「NO」の声を上げる側がデモを行うという。
「差別撤廃 東京大行進 The March on Tokyo for Freedom」と名付けられたこのデモの実行委員である高橋若木氏と佐藤剛裕氏に話しを伺った。
――なぜこのようなデモを立案したのですか?
高橋:大行進の企画は、私が立案したわけではなく、実行委員の木野トシキさんという方が最初にアイディアを出したのです。そして、木野さんがTwitterで東京大行進の呼びかけをするまでには、昨今ますます過激になっている差別団体の街頭活動に「やめろよ」と言ってきた沢山の市民のあいだの、機運の盛り上がりがありました。私は07年からNYに留学していたのですが、当時から次第に在特会などの日本のヘイト団体によるデモが動画サイトなどにアップされていて、憤りを感じていました。外国の友人たちにも、“日本にもこんな差別があるのか?”と驚かれて、情けなかった。帰国してから、一市民として何かできることはないかと思い、カウンター活動に参加するようになりました。カウンター勢力は、ヘイトデモを頓挫させたりと、ある程度の目的を達成しました。同時に、大阪では、差別団体によるデモが鶴橋のコリアタウンで繰り返し行われていましたが、それに抗議してきたカウンターの市民たちが、「仲良くしようぜパレード in大阪」というイベントを行いました。これが素晴らしかった。東京からも沢山のひとがかけつけました。そこで、様々な人が一緒に生きている社会にYES、憎しみにNOという声を、東京でも積極的に上げたいという機運が高まり、1963年8月にワシントンで行われた公民権運動の大行進に習う、大きな反差別マーチを東京で行いたいと呼びかけました。Twitterを中心に、その呼びかけに賛同するカウンターの有志が集まり、東京大行進の実行委員会が生まれました。
佐藤:私も以前からヘイト団体による活動をネットなどで見て、どうにかしなくてはいけないと思っていました。とくに、ヘイトデモの参加者がデモの前に“お散歩”と称して近隣の店舗などに嫌がらせや器物損壊をしていたのが、許せなかった。ヘイト団体のデモとはいえ、デモ自体は届け出を出して行われるものなので警察の目もあって奴らは悪さしません。しかし、デモの前後に連中はそういうことをしていた。これをどうにかしないといけないと思い、カウンターに参加していたんです。同時に、東京大行進のような、共生と反差別を広く社会にアピールするイベントが必要だと感じていました。街頭で差別主義者に一緒に抗議してきた人たちと、実行委員会に加わったのです。
――カウンターの一部は、言動の過激さを取り沙汰されることもあり、左翼の人々の一部には批判されることもあるようですが……。
佐藤:知っています。ただ、もともと新大久保の町で最初にヘイトに不快感を抱いていたのは、Kポペンと言われるKポップファンの若いコたちでした。しかし、器物損壊や暴力的な言葉を吐く連中に、普通の人が抗議をするのはとても難しい。そんな中、カウンターの側にも、差別者の暴力を身を挺して止め、ほかの人たちが抗議の声を上げられるように、先立って動いた人たちがいたということです。声をあげなければ変わらない。
高橋:東京大行進には、差別に反対して街で声を上げて来た様々な立場の人が参加します。特定の集団だけが率いているような印象があるとすれば、それは誤解です。多様な立場から、一般の市民が広く参加していることが、カウンターの強みなんです。東京大行進の最大にして唯一のメッセージは“私たちは日本政府に人種差別撤廃条約を誠実に履行するよう求めます”ということに尽きる。実行委員のなかでも、各メンバーの考えはそこで一致していますが、その他は違うことだってある。だから、そのメッセージに少しでも賛同できるなら、誰にでも参加してもらいたいんです。
――また、東京大行進は、「黒いスーツ着用」というドレスコードがあることが先走って、「差別反対デモでなぜドレスコード」という批判もあるようですが?
高橋:まず言いたいのは、決して排除のためのドレスコードではないということです。理由は二つあります。第一に、このドレスコードは、50年前にキング牧師らが行った有名な“ワシントン大行進”への最大限のリスペクトと連帯を示すものであり、どんな立場であろうと同じ人間なんだという包摂のためのドレスコードなんです。第二に、これは行進の先頭に立つ第一梯団の一部が抗議のためのプロトコルとして着用するだけで、第二梯団以降はDJやダンサーを載せたサウンドカーとともに楽しいパレードを行なうので、ヒップホップファッションの人だって、ドラァグ・クイーンだっているくらい服装には何も決まりがありません。
佐藤:実行委員自体、10代から60代までさまざまな属性の人が集まっている。反差別というと教条主義的な旧来の左翼と結び付けられたりすることもありますが、我々はそうした偉そうな態度に陥らず、もっと懐の広い活動にしたいと思っています。例えば、当日は高校生の男女が司会をしてくれます。差別に反対するのは、特別なことじゃなく、日常のなかで当たり前にやれることなんです。若い層から、差別って良くないという当たり前のことを言える空気が、この大行進をきっかけに出来上がればいいと思う。
――当日は飛び入り参加も可能?
高橋:もちろんです。変えられないし、変えるように求められるべきでない属性を持って人を判断し差別するようなことは、放っておけばどうにかなるものでもない。社会全体で考えていかないといけない。だからこそ、行進を見かけてそのメッセージに賛同できるから少しだけ一緒に歩くというのでも構わないんです。ぜひ一緒に歩きましょう。
佐藤:批評家気取りで冷笑主義に陥ってるだけでは、何も変わらないし何も変えられない。だからまず、一緒に歩くことから始めたいと思います。
●差別撤廃 東京大行進 The March on Tokyo for Freedom
日時 : 9月22日(日) 12時半集合 13時出発
集合 : 新宿中央公園 水の広場
その他、詳細は公式サイト(http://antiracism.jp/)を御覧ください。
<取材・文/日刊SPA!取材班>
※扶桑社新書より発売中の「保守の本分」著者noiehoie氏も同大行進に賛同している。
『保守の本分』 先鋭化する排外デモ、生活保護バッシング、改憲論。社会全体が「右傾化」していると言われる中、自らを「保守主義者」であり「右翼」であると自任する、ネット言論の暴れん坊が現代日本の「右傾化」「右翼」「保守」の正体を暴く |
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