“女性の貧困”最前線――『失職女子。』著者と貧困ルポライターが語る

「女性が輝く日本へ」と声高に叫ばれるスローガンを、もっともしらじらしい思いで聞いているのは当の女性たちだろう。単身女性を取り巻く実態は、働く世代の3分の1が年収114万円未満の低所得。〈若年女性の貧困〉はもはや、待ったなしで解決しなければいけないところまできている。

『失職女子。』著者と貧困ルポライターが語る「女性の貧困」最前線 貧困当事者として生活保護を受給するまでの道のりを描いた『失職女子。~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで~』が話題の大和彩さんと、貧困からセックスワークにからめとられる女性たちを追いつづけ、最新作『最貧困女子』(幻冬舎)に著した鈴木大介さんに、女性の貧困が内包する問題と、今後の課題について語ってもらった。

――なぜここまで女性が貧困化したのでしょう?

大和:女性は男性より非正規雇用で働く人が多いですよね。加えて、現在は男性であろうと、既婚女性、未婚女性、シングルマザーであろうと、誰しもが働きつづけなくてはいけない時代。そんななかで、女性の賃金だけ低くおさえられ、雇用環境の整備が追いついていないことが、一番の原因だと思います。私も失職するまえに正社員として働いていた時期もありましたが、ほとんどは契約社員と派遣。会社の倒産や派遣切りで失職し、その後は〈35歳の壁〉にはばまれ、100社連続不採用……。低所得と貧困は、常に隣り合わせです。

鈴木:僕は貧困女子のなかでも可視化されていない層、差別されている層を取材してきました。家庭に事情があって家出し、セックスワークにからめとられる少女たち。離婚後、子どもを養うために出会い系で売春相手を探すシングルマザーたち……。『失職~』を読んで、彼女らが何に困っているのか、ようやく見えました。大和さんは「文字は読めるのに、それを頭のなかで言葉や文にできない」ときがありましたね。

大和:生活保護を申請したころのことですね。

鈴木:貧困が思考力や判断力を奪っていく過程がよくわかりました。きっと彼女たちも大和さんと同じ景色を見ていたんですね。そんな状態で生活保護にたどり着くのはとてもむずかしい。とてつもなく空腹のとき、100メートル先においしい御馳走が用意されていても、目の前にあるパンを手に取るようなもので、手近にある脇道にそれてしまいます。彼女たちにとってはそれが、セックスワークなんです。

――その一方で、〈生活保護〉というワードを見ただけで、反射的にバッシングする人たちもいます。

大和:バッシングといっても「貧困は自己責任」「甘え」「仕事をえり好みしているだけ」とパターン化していて、どれも実情を知らずに言っているだけです。仕事も頼れる人もなく、貧困で身動きがとれなくなっている女性に、「困ったら女は体を売ればいい」という言葉が浴びせられることも多いですね。

鈴木:僕も『最貧困女子』を書くことで、自己責任論を封じ込めたいと考えていました。

大和:そんな状態の人が制度によって救われるのが、先進国だと思うのですが……。

鈴木:自己責任論は、決して勝者の理論ではないんですよ。「自分だってぎりぎりの稼ぎでがんばっているのに」という、貧困と隣り合わせで孤独な人たちが、この理論をふりかざしているんです。

『失職女子。』著者と貧困ルポライターが語る「女性の貧困」最前線

『男女別に見た生活保護受給者数』ほとんどの年代において、女性の貧困率は男性の貧困率を上回っている

大和:働きたくても仕事のない人がどうしても出てくるのが現在の日本社会ですから、自己責任論では片づけられませんよね。私は申請をする前に、「生活保護とは、福祉である」という一文に出会って、目が覚める思いでした。福祉は社会を豊かにするもの。病気になっても貧困に陥っても、福祉に受け止められる。そんなセーフティーネットが用意されているのが、先進国だと思います。

鈴木:健康保険と同じですよね。貧困に陥った人を切り捨てていくと単純に労働力が減ります。生活保護はそれを防ぐためのものです。その福祉が税収を圧迫しているというなら、乱暴な話、真っ先に切り捨てられるべきは高齢者ですよ。でも、そういうわけにはいかない。

大和:社会保障に充てられている予算は、全部で100兆円強。そのうち生活保護は3兆円程度、つまり3%以下なんです。生活保護が税収を圧迫しているというのはお門違いだし、切り詰めるべきところを切り詰めれば、もっと多くの人を社会保障で救えると思うのですが……。

鈴木:「インフルエンザに罹ったから、ちょっと病院に行ってきたよ」というのと同じ感覚で、「失業して次の仕事が見つからなかったから、ちょっと生活保護を受けてきた」「それで生活立て直して再就職できてよかったなぁ」というふうに利用されるべきものなんですよね。

大和:現実には、貧困を自覚した瞬間、「誰にも言えない!」と思ってしまいます。生活保護は風当たりが強いので、なおさら……。バッシングの数々を見ていると、受給者が口をつぐむのも理解できます。そして孤立していく。

鈴木:貧困は孤独とセットなんですよね。頼れる家族や地域があるかぎりは、貧乏であっても貧困ではない。すべての縁を失った最貧困女子の行き先が路上での売春であるなら、最貧困男子の最後の受け皿は刑務所です。そう考えると「ちょっと生活保護」ができる世の中のほうがいいのは、考えるまでもありません。

大和:最貧困女子』では、凄惨な家庭環境で育った少女たちが10代半ばで実家を飛び出し、縁を断たざるを得なかったケースがたくさん出てきますね。私は彼女たちの生い立ちを、「そうそう、ウチもこうだった」と共感しながら読みました。私も中学のときに家出を考えたんですよ。でも、きっとそうやって売春に取り込まれるだろうと考えて、できなかったんです。彼女たちは、もしかするとそっちにいっていたかもしれない〈自分〉だと思いました。

鈴木:そうやってセックスワーク側に流れていった女性たちは、頭のいい子が上に立って女の子たちだけのチームを作るのが典型です。トップの子は頭も容姿もよく、当事者の気持ちもわかっている。自分と同じ経験を持つ子らをまとめることで、満たされています。所属する少女たちも、そこで共通点の多い同世代の子と初めて出会い、縁を得られるんです。売春を通して初めて友だちができて、初めて親の悪口がいえる……。

大和:ああ、それで安心する気持ちはよくわかります。

鈴木:孤独と貧困のセットから抜け出す方法として、僕は炎上覚悟で〈恋活〉を提案しました。恋愛、結婚によって新しく縁を作り、制度に接続できるシステムがあるといいのではないか、と。でも、貧困当事者のなかには、そもそも家族の愛情を知らないがゆえに、それを求めない人もいる。大和さんは、自分が何で満たされると思いますか?

大和:私のようなタイプは、家族を作ってもそれはそれで非常に苦しいです。だから、勉強することです。知識を自分のなかに蓄積したい。いまは子ども時代を振り返って〈あのときの自分は貧困状態にあった〉〈あれは解離性障害だった〉と名前をつけることで自分を納得させる作業をしているところです。

鈴木:いろんなパターンの当事者がいますから、当事者ケアも一律というわけにいきません。だからこそ、大和さんには『よくぞ書いてくれました!』とお礼をいいたいんです。そして、ほかにも、発信する当事者が増えてくれればというのが僕の願いです。

<取材・文/三浦ゆえ>

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