子供は親と離れて暮らす、体罰は当たり前…“カルト村育ち”の漫画家・高田かやが壮絶体験を告白
「CREA WEB」コミックエッセイルームで連載され話題となったコミックエッセイ『カルト村で生まれました。』(文藝春秋)がついに単行本化された。「所有のない社会」を目指す某カルト村。そこで出会って結婚した両親の元に生まれた著者・高田かやは、一般社会に出る19歳までその村で過ごした。彼女が綴った少女時代の経験に、「こんな村があるなんて!」「平成の話とは思えない!」など大反響が寄せられた。今回は高田かや本人に直接、カルト村の実態を聞いてみた。
本書には「親と離れて暮らす」「体罰は当たり前」「朝5時半起床で労働がある」「お小遣いはもらえない」などなど、子供には過酷すぎる“村の特徴”が描かれている。しかしそれは悔恨に満ちた批判的な目線ではなく、どこかドライで客観的だ。
高田:体罰は我慢してやり過ごせたし、お小遣いがないのも手紙の検閲もそれが当たり前で、周りの子もみんな同じだったから、特につらい思い出ではないんですよね。親と離れて暮らすのも、つらいのは別れる時だけでしたし……。今、改めて考えてみると、「つらいなー」と思いながら生活していなかったですね。どっちかというと「めんどくさいなー」と思っていることが多かったです。「また呼び出しか」「食事抜きか」「今日も労働か」「また正座か」とか、「めんどくさいなー、早く終わらないかなー」というのが、村にいた頃の主な記憶です。
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(『カルト村で生まれました。』より、「村の特徴/体罰」について) 村で生まれ、すべてを「当たり前」のこととして受け入れた少女時代。しかし、「一般社会」と違っていたのも、また事実。カルト村で育ったことが“今”に及ぼしている影響はないのだろうか。 高田:その村で育ったメリットは、「共有である地球の資源を無駄遣いしないように」と叩き込まれているので、節水・節電が自然にできることと、野菜収穫とかの労働経験から、スーパーで虫のついていそうな野菜がわかることです。今も野菜を買う時は、虫がついていないか真剣に眺めてから買ってます。自然の中で育ったのに、虫が苦手なんです(笑)。 一方、村のミーティングで自分の思ったことを全部人前で話す癖がついているので、聞かれたことに何でもバカ正直に答えてしまうことと、執着心が薄いからすぐ人との関係を絶とうとしてしまう、そんなデメリットもありますね。 高田かやは19歳で、親とともに村を出ることになる。今回の“少女時代”以降は「続編で書きたい」そうだが、どうしても気になるのは“一般社会にはすぐなじめたのか”だ。大なり小なり影響はあるのではなかろうか。 高田:外見上は、賃貸アパートに引っ越してきた普通の親子に見えたと思うので、多分上手になじめていたんじゃないかなと思います。一般に出て来て真っ先に困ったのは、仕事探しでした。両親は大学中退っていう学歴があったからまだ良いんですけど、私は、学歴上は中卒なんですよ。村の高等部というのは、一般の高校とは違うので。そうなるとどうしても仕事が限られてしまい、面接にたどり着くことすらなかなかできなくて、本当に大変でした。村にいた時は、子供が自由に電話を使う事はできなかったので、電話のやり取りに慣れていなくて、仕事の応募の電話をかけるたびに毎回失敗していました。初めは受話器を両手で持って話していたんですよ! その次はこちらの声がちゃんと相手に聞こえているかが不安で、受話器の喋る方を手で囲って声が逃げないようにしていました。横で見ていた父が、「そうやって電話すると相手には声がこもって聞こえづらいよ」って教えてくれたんですけど、半信半疑でした(笑)。応募の電話をするだけで、ものすごく緊張して、毎回汗だくでした。 「村の実態」以外に、本書でもう一つ驚くべきことがある。それは高田かやの記憶力だ。少女時代の数々の出来事が、その気持ちとともに鮮明に描かれているのだ。 高田:周囲の人と子供時代の思い出話をするときに、他の人はなんで小さい頃の出来事を忘れてしまうんだろう、なんで自分はこんなに子供の頃の記憶があるんだろう、自分はおかしいんじゃないか……と疑問に思っていました。でも、子供時代の記憶や気持ちが大人になった今も鮮明に残っていたおかげで、こうして『カルト村で生まれました。』を描くことができました。この本は、童話を書くような気持ちで描いた実録コミックエッセイなので、子供心が残ったまま大人になってしまった人や、自分は少し他の人とは違うなと感じている人に読んでいただけたら嬉しいです。 『カルト村で生まれました。』を“特殊事例”として、知的好奇心を満たすという読み方もあろう。しかしこれは、あくまで一人の少女が経験した小さい頃の思い出が詰まった日記でもある。自身をその回想と重ねて、“あの頃”を振り返るという楽しみ方もできるはず。たまには“十人十色”であるはずの子供時代を思い出してみてはいかがだろうか。
高田かや/東京在住。カルト村で出会い、結婚した両親のもとに生まれ、村で共同生活を送る。19歳のとき、両親と共に村を出て、一般社会で暮らし始める。一般社会に出てから知り合った男性と結婚し、漫画制作を開始。クレアコミックエッセイルームへの投稿がきっかけでデビュー。本作が初めての単行本となる。
取材・文/日刊SPA!編集部
(『カルト村で生まれました。』より、「村の特徴/体罰」について) 村で生まれ、すべてを「当たり前」のこととして受け入れた少女時代。しかし、「一般社会」と違っていたのも、また事実。カルト村で育ったことが“今”に及ぼしている影響はないのだろうか。 高田:その村で育ったメリットは、「共有である地球の資源を無駄遣いしないように」と叩き込まれているので、節水・節電が自然にできることと、野菜収穫とかの労働経験から、スーパーで虫のついていそうな野菜がわかることです。今も野菜を買う時は、虫がついていないか真剣に眺めてから買ってます。自然の中で育ったのに、虫が苦手なんです(笑)。 一方、村のミーティングで自分の思ったことを全部人前で話す癖がついているので、聞かれたことに何でもバカ正直に答えてしまうことと、執着心が薄いからすぐ人との関係を絶とうとしてしまう、そんなデメリットもありますね。 高田かやは19歳で、親とともに村を出ることになる。今回の“少女時代”以降は「続編で書きたい」そうだが、どうしても気になるのは“一般社会にはすぐなじめたのか”だ。大なり小なり影響はあるのではなかろうか。 高田:外見上は、賃貸アパートに引っ越してきた普通の親子に見えたと思うので、多分上手になじめていたんじゃないかなと思います。一般に出て来て真っ先に困ったのは、仕事探しでした。両親は大学中退っていう学歴があったからまだ良いんですけど、私は、学歴上は中卒なんですよ。村の高等部というのは、一般の高校とは違うので。そうなるとどうしても仕事が限られてしまい、面接にたどり着くことすらなかなかできなくて、本当に大変でした。村にいた時は、子供が自由に電話を使う事はできなかったので、電話のやり取りに慣れていなくて、仕事の応募の電話をかけるたびに毎回失敗していました。初めは受話器を両手で持って話していたんですよ! その次はこちらの声がちゃんと相手に聞こえているかが不安で、受話器の喋る方を手で囲って声が逃げないようにしていました。横で見ていた父が、「そうやって電話すると相手には声がこもって聞こえづらいよ」って教えてくれたんですけど、半信半疑でした(笑)。応募の電話をするだけで、ものすごく緊張して、毎回汗だくでした。 「村の実態」以外に、本書でもう一つ驚くべきことがある。それは高田かやの記憶力だ。少女時代の数々の出来事が、その気持ちとともに鮮明に描かれているのだ。 高田:周囲の人と子供時代の思い出話をするときに、他の人はなんで小さい頃の出来事を忘れてしまうんだろう、なんで自分はこんなに子供の頃の記憶があるんだろう、自分はおかしいんじゃないか……と疑問に思っていました。でも、子供時代の記憶や気持ちが大人になった今も鮮明に残っていたおかげで、こうして『カルト村で生まれました。』を描くことができました。この本は、童話を書くような気持ちで描いた実録コミックエッセイなので、子供心が残ったまま大人になってしまった人や、自分は少し他の人とは違うなと感じている人に読んでいただけたら嬉しいです。 『カルト村で生まれました。』を“特殊事例”として、知的好奇心を満たすという読み方もあろう。しかしこれは、あくまで一人の少女が経験した小さい頃の思い出が詰まった日記でもある。自身をその回想と重ねて、“あの頃”を振り返るという楽しみ方もできるはず。たまには“十人十色”であるはずの子供時代を思い出してみてはいかがだろうか。

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『カルト村で生まれました。』 WEB連載時から大反響!! ![]() |
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