「この女、かっこいい!」――46歳のバツイチおじさんは影のあるクール美人に心を奪われた〈第21話〉
女の子「勝負しようよ! 負けたら、全員にテキーラおごってね」
なんとも理不尽な賭けだ。
しかし、今夜はカジノで大勝ちしている。
これぐらいの賭けはかわいいもんだ。
俺「いいよ! そっちが勝ったらね」
そう言うとカウンターは盛り上がった。
ルーレットに続き今夜2回目の真剣勝負が始まった。しかし、今回は勝ってもこちらには何もメリットのない。
実はこの手のゲーム、そんなに弱い方ではない。オセロのアプリも最強レベル99をクリアしている。フジテレビの「Jukugo Awase」という番組で自らボードゲームを作ったこともある。
向こうは手慣れた感じでゲームを始めた。
初めてするゲームだったが、圧勝した。
2人目、3人目とかかってきたが勝ち続けた。
俺が勝つたび「あー」という溜息まじりの声がこだました。
4人目の女子に入れ替わった。クールそうな美人な娘だ。他の娘の応援から、みんなが彼女に期待をしているのがわかった。
ゲームが始まるとすぐにあることに気づいた。
「あれ? この娘、他の娘たちと思考回路が違う」
論理的に先の先まで読む。
冷静でくだらないミスをしない。
勝負は白熱し、長時間続いた。
他の女の子たちは盛り上がった。
しかし、目の前のクール美人は、長考はせずに即切りの判断で淡々とゲームを進めていった。
結果、最後の最後の一手差で俺が負けた。
「や~!!」
カウンターの中は大盛り上がり。一杯3$のテキーラを5人分におごる羽目になった。しかし、俺とのゲームに勝ったクール美人は、静かに微笑むだけで淡々とボードゲームの後片付けをしていた。
「この女、かっこいい!」
俺はあっという間にこのクール美人のことが気に入ってしまった。
彼女の名前はエラ。27歳の女の子で、このお店で働きながら大学に通い、会計士を目指しているとのこと。どこかしら影がある。
日本での俺は今まで、夜の蝶、すなわち水商売の女性を好きになったことがなかった。キャバクラにもまったく興味がない。
というのも、そこで働く女の子たちのお金への執着心が怖い。
金への執着が、時に彼女たちを狂わせ、深い闇にはまっていくケースが多く見られる。女を金に変える。そのことに対する無自覚さや必死さを感じると、胸が痛くなる。
写真を撮るとよくわかる。夜の蝶たちにカメラを向けると自然と手で顔を隠す。体育会系バカの俺には、その仕草が「不健康」に見えてしまう。もちろん、そんな俺の色眼鏡が自分自身の器の小ささを象徴していることは承知している。でも、心が彼女たちの「不健康」を自然と拒否してしまう。「不健康」のどこかに、彼女たちの心の奥底にある後ろめたさを感じてしまうのだ。
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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<バックナンバー>
【第20話】「運の流れを変えなければ」――46歳のバツイチおじさんはカジノに活路を見出そうとした
【第19話】「俺、ここで死ぬかも」――46歳のバツイチおじさんは窓のない部屋で生死の境をさまよった
【第18話】「俺は女性の涙に人一倍弱い」――46歳のバツイチおじさんは彼女の悲しい表情に胸が締め付けられた
【第17話】「なんだか新婚旅行みたいだね」――46歳のバツイチおじさんは象の背中の上で彼女に微笑みかけた
【第16話】「こんなところで漏らしたら大惨事だ」――46歳のバツイチおじさんは全神経を集中させてトイレを探した
【第15話】「俺は今、自分を見失っている」――46歳のバツイチおじさんは旅を立て直すために大きな決断を下した
⇒【第1話】からの全バックナンバーはコチラから
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