2018年大河ドラマ『西郷どん』は第二の『花燃ゆ』になる!? 大河ファンが不安視する幾つかの理由
サイト『NHKドラマ』から気になる一文を引用させていただきましょう。 “明治維新から150年、2018年大河ドラマの主人公となるのは男にも女にも“日本史上最もモテた男”西郷隆盛です” 嫌な予感しかない……こんな寒気がしたのは「幕末男子の育て方。」(2015年『花燃ゆ』のキャッチコピー)以来だ……。 さらに、ORICON STYLE9月8日付の記事(18年大河は西郷隆盛 原作・林真理子×脚本・中園ミホ「女の視点で切り込みます」)でも嫌な予感が……。 「女の視点で」幕末に切り込んだ結果がどうなるか、『花燃ゆ』で既に経験済みではありませんか。 言っておきますが、「女の視点」や「女性脚本家・原作者」が悪いわけではありません。 『篤姫』や『八重の桜』は、実際に女性の立場で明治維新を見た作品であり、なおかつ至極まっとうな出来でした。読んでそのまま「ヒロインの目から見る幕末」であれば、問題はありません。 ところが本作の場合は、主人公がまず男性、しかも市井を生きる人々ですらありません。 維新三傑の一人なのです。 それではどういう意味で本作は「女の視点」で切り込んでいるのか。ORICON STYLEの林氏コメントを抜粋します。 “その中でも一番難解で面白いのが、西郷さんです。彼をめぐる女性たち、流された島々を深く描くことによって、いままで誰も書かなかった西郷どんを作り上げているという自負があります。” このコメントを読むと、「女の視点」というのはワイドショーや、女性週刊誌的なゴシップ目線で西郷隆盛のプライベートを描くことであるように思えます。あるいは『花燃ゆ』の、吉田松陰が頭をヨシヨシされたり、高杉晋作がビンタをされたりしていたポスターも連想させます。 要するに、 「天下の英雄って言っても、女の前じゃかわいいものなのよ!」 的な、痛い勘違い目線ってヤツですね……。 次は脚本の中園氏のコメントも見てみましょう。 “西郷隆盛という人物は謎に満ちています。決して聖人君子ではない。太った愚鈍な男でもない。戦の天才で革命家。一つ確かなのは、男にも女にも大層モテたということ。子どもも学者も侍も殿様も彼と触れ合い、語り合った者は皆、西郷に惚れた。一体どんな魅力だったのか!?(注釈)セゴドンという男の魅力に、女の視点で切り込みます。” やたらと「モテる」ということを強調しています。 この「モテ」を強調するスタンスで思い出すのは、やはり『花燃ゆ』です。 松下村塾生をずらりと並べ、「俺ら松下村メン!」とコピーをつけた画像を作り、さらには公式サイトで「推しMEN診断」なるコーナーを設置していたあのプロモです。今度は公式サイトに西郷どんファンクラブコーナーでも作って、大久保一蔵やら篤姫に魅力をうっとりと語らせたりする気でしょうか。 ゴシップ的視線だの、モテ分析だの、そんなものは二の次ではありませんか。 そりゃ西郷隆盛は人間ですから、彼の恋愛事情や家庭環境を描くことはありです。ドラマである以上、そこにまったく触れないわけにはいきません。ただしあくまでそれはサブプロットであり、前面に出すものではありません。 誰かがモテたとか、ちょっとドジとか。そんなものは民放の現代劇でも描けるではありませんか。一年を通してじっくりと、NHKが歴史上の人物を描くのが大河ドラマです。歴史を描くことが最も重要であるはずです。 西郷隆盛について描くべきことは、維新の中で彼がどう活躍したのか。そして何故、明治政府と対立してしまったか。彼が歴史上で果たした役割でしょう。 それをないがしろにするのであれば、わざわざ幕末の人間を取り上げる意味なんてそもそもないのです。幕末ファンは幕末の動乱が見たいという、基礎中の基礎を思い出してください。「天下の英雄も女の前じゃかわいいもの!」的な痛いやつ?
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