更新日:2022年08月08日 03:39
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2018年大河ドラマ『西郷どん』は第二の『花燃ゆ』になる!? 大河ファンが不安視する幾つかの理由

尚武の気風が強い薩摩で女性視点は……

 ついでに言いますと、薩摩大河で「女の視点」を出してくるあたりに、決定的な食い合わせの悪さを感じます。  大奥入りした篤姫ならばまだしも、薩摩といえば、尚武の気風が強いことで知られています。男色の気風が強く、女性との恋愛はいやしいものと低く見てすらいました。よりによってその薩摩を、「女の視点」で切り込むというのは、無謀ではないでしょうか。 「吉田松陰の妹をヒロインにして大河ドラマを作る」という『花燃ゆ』は、当初から「無茶ぶり」だと言われておりました。「西郷隆盛の魅力に女の視点で切り込む」というのも、それに並ぶ難題ではないでしょうか。何故よりにもよって薩摩を「女の視点」で描くんでしょうか……。  さらに近年の大河で問題と言えるのは、「女の視点」や「女性向き」という言葉の用い方が、「手抜き」のソフトな言い換えになっていることです。「女の視点」だから即座に悪いとなるわけではありません。当時の女性の風俗や置かれていた境遇を調べ、それと丹念に再現するのであれば、それはそれで意義があると言えます。  ところが近年の場合、 「史実を調べてきっちり描くとなるといろいろ面倒くさいから、壁ドンとかイケメンとかスイーツ要素をちりばめて誤魔化そう」 になっているわけです。  それで失敗したら、 「いやー、でも最近の視聴者、特に女性なんかは不勉強で史実を出してもわからないでしょう? だから胸キュン路線なんですよ」 みたいな逃げをうつわけです。その手にはもうウンザリです。

主演俳優不在の制作発表

 本作制作発表の感想を見ていると、既に本作から嫌な予感を感じ取っている人がいることに驚かされます。  さらに大河ファンだけではなく、主演が内定していた堤真一もそうだった可能性があります。  なぜなら、スポニチの9月8日付けの記事で、「主演は堤真一に一時内定も交渉難航」と報じているからです。  このニュースは9/8付けですが、9/2には主演内定とのニュースが出ていました。  ところが、発表直前になって主演は辞退したと言われています。  もちろんスケジュールがあわないとか、体調不良とか、いろいろな理由はあると思います。ただし考慮せねばならないのは、『花燃ゆ』主演はじめとするメインキャストが、あのドラマからキャリアにダメージを受けてしまったということです。  あの作品の問題点は演じる側ではなく、脚本はじめとするスタッフ側にあったにも関わらず、矢面に立たされるのは常に女優でした。  プロデューサーらは視聴率評価低迷の理由を尋ねられると、美辞麗句で誤魔化して、矢面に立つ主演女優を庇おうと言う気は感じられませんでした。大河ドラマは視聴率が低迷した作品でも、キャリアにとってはプラスになるものであったはずです。ところが『花燃ゆ』は、大きなマイナスとなることも証明してしまいました。打ち切りもなく、一年間作品の顔をつとめるわけですから、他のドラマとは比較にならないほど深刻な影響が出るわけです。  もしかすると、当初オファーされていた俳優は、このリスクをおそれて辞退したのではないかと思えてしまうのです。真相はわかりませんが、『花燃ゆ』が大河主演はハイリスクであると示したことは確かです。主演俳優捜しが難航したのも、そのせいではないでしょうか。  私は決して『西郷どん』に失敗して欲しいと思っているわけではありません。  昨年の『花燃ゆ』総評の時点で、2018年大河も作り手の姿勢によっては、同じ轍を踏みかねないと警戒しておりました。その予感が、現実となってもまったく嬉しくはありません。  そうならないためには、いくつかの条件が必要でしょう。幕末だけではなく薩摩専門の考証、できれば複数名をつけること。歴史が好きで敬意を払える脚本家を起用し、脚本家は考証の意見を取り入れ誠実に作品を仕上げてゆくこと。今からでもこの条件がクリアできるのであれば、望みはあると思います。  しかし残念ながら、公式発表の時点で篤姫や坂本龍馬の名はあっても、大久保利通の名がない時点で、嫌な予感は的中するのではないかと思います。  この予想が大きく外れることを、私は心より願っております。 <コンテンツ提供/BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン) > 文/武者震之助 日本で初めて歴史をテーマにしたポータルニュースサイト武将ジャパンにて、大河ドラマ『真田丸』感想レビューを連載中。
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