ビンスとストーンコールドの長編ドラマ=序章――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第286回(1998年編)
ストーンコールドとビンスは、リング上でのTVインタビューというシチュエーションで顔を合わせた。「これからは仲よくやっていこう」というビンスの紳士的なオファーに対し、ストーンコールドは無言のまま必殺スタナーをWWEオーナーにお見舞いして“ファック・ユー”の意思表示をしてみせた。スーツ姿のままリングのまんなかで大の字にノビたビンス向かい、ストーンコールドは中指を突き立てた。
ストーンコールドがビンスのボディーに強烈なキックをぶち込み、そのままの体勢から前方へのスナップメアのモーションでビンスの首をみずからの右肩にめりこませたシーン――ストーンコールド・スタナーが完ぺきに決まった瞬間――に1万3000人の大観衆はどよめき、それからシーンと静まり返った。
ビンス・オーナーの“失神”という想定外の展開にすばやく対応したパット・パターソン副社長、サージャント・スローターらフロント陣は、場内警備の警官とセキュリティー・チームを招集してストーンコールドを捕獲。ストーンコールドは傷害罪の現行犯で“逮捕”され、オーバニー市内の留置所に連行された。
いまになってみれば、スタナーを食らったビンスがいかにも大げさにのたうちまわるシーンは、このあと数年間つづく因縁ドラマのプロローグだった。ストーンコールドとビンスの乱闘シーンの定番化―シリーズ化は、ビンスにとってはもちろん“レスラー転向”への伏線になっていた。
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